DC1: ホーリーフォース素案

 

  リボルバーが最速1週間というハイペースでバラバラのパズル状態のホーリーフォース素案を完成させ、政府援助を含めた発表を行った。ホー リーフォースのプロジェクトが本格的に始動したのは発表から1週間後、その後に試作型強化型装甲を完成させるまでに至っている。

「そ う言えば、リボルバーはどうやって会議で話し合った素案を完成させたのか―」

  その日の夜、自宅でドラゴンの覆面はホーリーフォースについて調べてほしい事があると言う虎の覆面からの依頼を受けて、本格的に調査を始 めたのだが―予想外の所で難航していた。

「資 料として、提供を受けたデータだけではホーリーフォースが何なのかは分かりにくいのだが、他に何が資料としてあるのか―」

  ドラゴンの覆面は、ホーリーフォースの新聞記事、ホーリーフォース特集の組まれた雑誌類、その他の音楽業界に関する書籍等を他の議員に集 めさせていたのだが、どれも決め手に欠ける物ばかりで、求めている情報とは程遠い。

「楽 曲管理システムはホーリーフォースとは無関係のように思えるが…」

  ドラゴンの覆面は楽曲管理システムのデータベースにアクセスし、ホーリーフォース関連の情報を調べる事にした。しかし、求めているような 情報は特に発見出来なかった。

「こ こも駄目だったか―?」

  データ検索をしている途中で、ドラゴンの覆面は手を滑らせて何もないスペースにマウスカーソルを合わせてクリックしていた。クリック後に 現れた画面は、インターネット上のアーカイブにも見えるのだが…。

「こ れは、パズルのようにバラバラになったデータ情報に見えるが…」

  表示された情報は項目ごとに説明があるのだが、文章は走り書きのように適当に書かれており、中には何かのリンク先が無数に貼られているだ けの物も存在しており、これが本当にホーリーフォースと関係があるのか…素人目には理解する事は困難であった。

「ホー リーフォース、ルール概要―?」

  最初に開いたデータを見て、ドラゴンの覆面は驚いた。ホーリーフォースの公式ホームページやハンドブック関係に書かれている物とは全く異 なるルールが、そこには書かれていたからである。

 

『ホー リーフォースの基本ルールは、3分1ラウンドをベースにして、相手のライフゲージが0になった地点で敗北となる―。ローカルルールの範疇 だが、3分3ラウンドや3分2ラウンド、10分2ラウンドのようなケースを望む場合もある。しかし、この辺りは会場を提供する側と相談す る必要性があるかもしれない―』

『武 装は、実弾系銃火器に関しては殺傷能力のないダミー弾を使用。ビーム兵器は威力等を考慮してルールを設定。実体剣は強化型装甲のスペック 次第に依存するので、現状では設定しない―』

『強 化型装甲の体力設定は装着者の能力で変化するので、若干の有利不利が出てくるかもしれない。その辺りは格闘ゲームでも良くあるような形式 を参考にしてルールを組んでいく方向になるかもしれない―』

『強 化型装甲とはいえ、アイドルの顔面攻撃等は今後のライブにも影響するので、基本的には全面禁止とする。故意ではない顔面攻撃は特に警告を 取らないが何度も続くと警告を取るケースが出るかもしれない。3度の警告を取られた場合は対象者を該当ステージでは失格とするが、そうな るとファンも納得はしないと思うので、この辺りはルールを詰める必要性があるかもしれない』

『ラ イブで使用する楽曲は3分に収める。3分より早く終わる曲は3分にした別バージョンを用意する等の処置を行う。3分以内にライブが終了す るようなケースでは途中で曲が終わるかもしれないが、この辺りは仕方がないかもしれない。ルールを詰める作業で改訂の余地があると思う』

『ラ イブに関してはホームページで開催予定を発表し、周囲の警備等にも関係する為にゲリラライブのような仕様は取らない。仮にゲリラライブが 行われた場合には、ケースバイケースで対応する事になると思われる。その際は楽曲なしやその他のローカルルール適用範囲になる―』

『ラ イブの開催予定場所は関東中心になってしまうのが、現状では仕方のない事ではあるが…今後の予定として関西等でも運用できるようにシステ ムを調整しよう―』

『強 化型装甲のデザインは一般公募という方向にしていこうかと思う。それでも全部を公募にする訳にはいかないが…』

『ラ イブに関しては会場へ直接行けない人の為にもネットでの生放送や動画配信等も考えている。その他にも、配信された動画もスムーズに運用で きるように2次利用規定を大幅に緩和する予定で考えようと思う。これによって、ホーリーフォースに利益が大量に入るという可能性は減る が、知名度アップや宣伝費用を減らす事に貢献する可能性は高いだろう…と思う』

『強 化型装甲の一部スペックを調べてみたのだが、これは男性が運用するには難しいレベルのようだ。何故かはわからないが、女性の方がイメージ 力の強いというデータなのだろうか―。この辺りは実際に実験をしなくては結論が出てこない―』

その他にもホーリーフォースに関する色々な事が書か れていた。リンクの貼ってある物に関しては、リンクが切れている物やリンクアドレスが意図的に違う物に差し替えられている物も存在してい た。その中には、ホーリーフォースとは全く関係のない音楽ゲームやヒーローショーのスケジュール表、イラスト交流サイトのホームページア ドレス等がまざっていた。

「こ の中に、ホーリーフォースの情報が本当にあるのか…」

  大量の情報から、ドラゴンの覆面は1つのホームページアドレスを見つけた。そのアドレスは、似たようなアーカイブサイトへのアドレスなの だが…ホームページトップの文章を見ると、英語のページだったのである。

「海 外のアーカイブサイトか…」

  ホーリーフォースに関する情報を探していたはずが、ドラゴンの覆面はいつの間にか海外のアーカイブサイトの情報検索をしていたのである。

「こ の情報は、まさか…?」

  検索をしている途中、彼は数年前に閉鎖となったサイトの情報を見つけた。その中身を見て、彼は衝撃を覚えたのである。