×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

   4:新鋭の出 現する5月

 

 4月のミュージッ クユニオン、2名のファイナリストに選ばれたのは―。

『黒沢は想定内だっ たが、藍坂が選ばれるとは思っていなかった』

『だが、他のメン バーもファイナリストに相当する実力だった。これは、5月からのハードルが上がるな』

『5月に関しては、 4月26日と27日にも予備予選を行うらしい。今回はネット受付だけで5000人の参加希望者が出ている。第1次予選に選ばれるかは、予備予選次第になる かもしれない』

 決勝に残ったのは 黒沢と藍坂以外にも、セナと無名の選手がいたのだが…どちらも力及ばずに決勝で涙をのんだ。

「4月に勝ち残った 黒沢は、今後の予選には出られない。そうなると、逆にチャンスが巡って来たという事か―」

 ネット上の書き込 みを見ていたのは、意外な事にバスターだった。4月にファイナル進出権利を獲得した2名はファイナルまでに行われるミュージックユニオンの5月期と6月期 予選には出場出来ない事になっている。その為、強豪である黒沢が最初に勝ちぬけたという事は全ての参加者に均等なチャンスが来たと言う事にもつながる。

「しかし、これは逆 に黒沢等に影響を受けた新鋭参加者が現れる事も意味しているか―」

 バスターが参加し た事で、過去に自分が出場していたスポーツ番組に参加していた選手も多数参戦する事は目に見えていた。それを考えると、簡単には本戦へ進む事は逆に難しく なってしまった気配もしていた。

「後は、スーツ用の 強化パーツも4月期よりグレードアップしている事も気になる。参加者と言う部分でも激戦だが、最良のカスタマイズを見つけるのも―」

 

 4月26日、前回 の予選が行われた場所と同じ会場で5月期ミュージックユニオンの予備予選が行われようとしていた。

「今回は、26日と 27日で2回の予選を行います。片方の予選でスコア上位100人が第1次予選へと進む事が出来ます―」

 アナウンスでも、 今回の予選が5月期の1次予選へとつながる事が言われている。書類の地点で5000オーバーという人数をどうやって…と思われる個所があったが、26日と 27日に分けて行うと言う形を取ったようだ。今回に限っては、書類の地点で大量の応募があった為に当日受け付け部門は行わない事になってしまったが―。

「今回は、目立った トラブルはないように見えるが―」

「前回は警察が出動 するような騒ぎにもなったからな。参加者も自重しているという証拠じゃないのか?」

「それ以上に、警察 に出てこられてファイナルが中止になったら、優勝賞金も消滅するからな。2000万円なんて宝くじの1億や6億という額には遠く及ばないが、ファイナル進 出までに別扱いで賞金がもらえる事を考えれば―」

「確かに。準決勝進 出で10万、決勝進出で50万、ファイナル出場で100万…合計で160万円は大きいな」

「出場の際にスーツ 等の諸経費、会場までの交通費を考えれば…10万円で元が取れると考えるのはレアケースの可能性もある」

 今回は観客サイド に回る事になった、前回の予選敗退者達は口を揃えて2000万円が安い賞金では―。

「一番大きいのは 2000万円が税金免除になっている所か―」

 一般的に、テレビ 番組の賞金は税金免除の対象にはなっていない。しかし、ミュージックユニオンの賞金は優勝賞金である2000万円はもちろんの事、それまでの過程で得られ る賞金も全て税金が免除されている部分が一番大きい。これは政府もミュージックユニオンに協力をしているという部分が大きいのかもしれないが、この為に参 加者が増える現象につながっているのかもしれない。

 

 26日の予選では 特に目立った選手の姿は全くなかった。しかし、その一方で黒沢や藍坂と言ったネームド参加者に遅れを取らないような参加者が多かったのが特徴だった。

「朱槻焔、彼ならば 決勝に進めそうな気配がする」

 朱槻焔(あかつ き・ほむら)、彼は第1回にも参加していた。その時は違う名前で参加していたのだが、予選途中で腕に激痛が走ったと言う事で担架に運ばれている。その当時 は第2回とは比べ物にならないような装備だったのだが―。

『前回のテレビで出 たメンバーは、大半が27日に移動しているようだが、ここは新規参加者にとっては大変になりそうだ』

『それでも、テレビ で登場した予選の勝者は順調に進んでいるようだな。中には敗退した参加者もいるようだが―』

 4月期では勝ち 残ったとしても5月期で同じような展開になるのかと思うと、実はそうではなかったりする。今回も前回と同じ予選2種目が行われたのだが、前回よりも難易度 を上昇させた難しい物になっている。

『単純に難しくした だけではなく、簡単に陥落された箇所を微調整した良い改良』

 この掲示板での一 言が該当する…そんなステージなのである。

 

 27日の予備予選 2日目、事件は誰もが予想していなかったこの日に起きた。

『おいおい、マジか よ』

『まさか、そんな展 開になるとは―』

『本命と言われてい たのに。怪我では仕方がない。回復を待つのみか…』

 26日の予備予選 では顔を見せていたワイルドカードとも言える人物が怪我の為に負傷したというのだ。原因は不明だが、朱槻と同じように何者かと接触後に謎の激痛に襲われた のだと言う…。

『過激なファンもい る物だな』

『これは普通に考え て、営業妨害か?』

『鉄道ファンみたい に色眼鏡で見られる…と言う事なのか?』

 ネット上では、こ の人物が負傷した理由に関しては触れていなかった。一つだけ判明しているのは、これが超有名アイドルファンクラブの残党による妨害とは違う何かであるとい う事だけである。

『超有名アイドル ファン以外…まさか、別の男性アイドルファンクラブの方か?』

『こうなってくる と、実在アイドルファンクラブが全て怪しいという事にも―』

『疑心暗鬼か…。そ れがアヴェンジャーの狙いなのか?』

『アヴェンジャーの 存在その物が、音楽業界と超有名アイドルの存在を完全否定するような気配がするが―』

 アヴェンジャーの 存在はネット上でも議論されてきた。しかし、彼らの真の狙い等に関しては分からないままである。超有名アイドル市場の完全復活、超有名アイドルによる絶対 支配等―中には飛躍しすぎたような話題もあるのだが、誰一人として真相にたどり着いた人物はいなかったのである。

『シオンは事件の真 相を知っていると思っていたが、違うのか?』

『一連のファンクラ ブ元会員が逮捕されている騒動は、アヴェンジャーとは無関係だったらしい。俗に言う愉快犯だな』

『超有名アイドルも 否定し、音楽ゲーム楽曲や同人楽曲がメインとしている音楽業界も拒絶する…まさか、それこそ男性アイドルサイドの方が―』

『あるいは、全ての 音楽を過去の物にして別ジャンルを生み出そうとしている芸能事務所とか…それも違うか』

 ログや現在進行形 のスレでもアンノウンの真の目的、アヴェンジャーの保有戦力の情報が外部に漏れている形跡はない。彼らが秘密主義を貫いているのか、それとも?

 

『まさか、ワイルド カードの棄権に続いて有望な参加者まで予選敗退とか―』

『一部ではミュー ジックユニオンが賭けの対象にされているとか…そんな噂も浮上している。サッカーくじを超える賞金が出るとか話題になっていたが―ひょっとすると新手の詐 欺なのかもしれない』

『政府もそうだが、 シオンという存在がユニオンを何とか正常に運営しようと言う流れになっている可能性も―』

 ネット上では、ワ イルドカードが棄権した事に加えて予備予選を勝ち残った参加者の何人かが予選敗退した事、それに加えて賭けの対象にミュージックユニオンが利用されている 事等が書きこまれていた。

「超有名アイドルに も存在した流れが、ここにきてミュージックユニオンにも―」

 一連の書き込みを 見た藍坂は、下手をすればミュージックユニオンも音楽業界を崩壊させてしまうきっかけを作るのでは…と懸念していた。そうなると、音楽業界での最大派閥は アイドルから音楽ゲームへシフトしたのだろうか…?

 

 準決勝のスタジオ へ向かう藍坂の目の前に現れたのは、ツバサだったのだが…。

「何処かで見覚え が…」

 ツバサ本人は見覚 えのある人物が通りかかった事は分かったのだが、それが藍坂である事には気付かなかった。アーマー…と言うよりもセーラー服を着ていなかったという事もあ るのだろうか。

「気のせいかな?」

 ツバサは、そのま ま会場へと向かった。藍坂の方はツバサの存在はネット上でしか知らず、顔の方は確認していなかった。顔と言ってもスーツ装備時にはバイザーをしている為に 具体的には分からないのだが―。

 

『まさか、このよう な流れになるとは―』

『誰が予想出来たの だろうか、この展開を』

『物凄いバトルだっ た』

『焔は想定内だった が、ツバサは―』

『早いかもしれない が、6月のバトルが楽しみだな。6月はファイナルも兼ねている関係上で早期決着が予想されるが―』

 公式ホームページ にアップされた決勝戦の動画を視聴し、その結果に多くの人物が驚きを隠せなかった。

「やっぱり、あの時 の人物は―」

 藍坂は一連のバト ルを特別席から見ていたのだが、その結果を改めて見ても実感と言う物がなかったのである。相手はツバサよりも体格差の激しいバスターハンターと言う事も あって、ツバサの勝つ確率は非常に低いという状況下―。

 

「こちらも負けると いう気は全くない―」

 バスターは大型 ナックルを構えた状態でツバサを挑発する。しかし、ツバサが挑発に乗るような様子を全く見せない。

「私も負けられない 理由があります。音楽業界を立て直し、かつてのような盛り上がりを取り戻す事。それが、今の私に出来る事」

 ツバサの一言を聞 いたバスターは、手加減をしている場合ではないと悟った。彼のマントを兼ねたアーマーは、特殊な形状記憶合金で出来ており、その謎とも言える技術でマント がアーマーに変形、ルール上で認められた範囲での自己修復機能、更にはバスターのパワーに合わせてアーマーの強度が変化すると言う…ある意味でチートと言 われてもおかしくはない機能を持っている。

「お前の覚悟、本物 のようだな。俺が過去に多数のスポーツ番組で優勝を飾っていた時の目にそっくりだ…」

 そして、バスター はナックルをロケットパンチのように飛ばしてきたのである。あのサイズのナックルが高速で飛んできたのだ。これをかすっただけでもアーマーにダメージが入 り、下手をすれば致命傷も避けられないだろう。直撃すれば―。

「一か八か…勝 負!」

 手持ちのビームラ ンチャーに接近戦用のクロー付きシールドを合体させたツバサ、ナックルは確実に迫っている中で彼女はビームランチャーの引き金を引く。

「なんだと―」

 その光景に驚いた のは、バスター本人でもなければ、観客や司会者でもなく…何と黒沢だったのである。

「これが、ミュー ジックバーストの本来発揮されるべきパワーなのか―」

 バスターはナック ルが高出力のビームに押し負けた末に弾き飛ばされるのを見て、今の自分ではツバサに勝つ事は無理なのだと悟った。しかし、それでもバスターには後には引け ない理由がある。

「俺は、今まで共に 戦ってきた仲間の思いを背負って戦っている―ここまで来て負けて帰る訳にはいかない!」

 バスターは、吹き 飛ばされた左のナックルを即差に回収して、今度は距離を詰めてナックルをツバサに向けて放つ体制を取ったのだが、その射程距離は何と―。

「あの射程距離では ―」

 藍坂は何かを確信 していた。バスターの放ったナックルは零距離射撃に近い状態で放っている。これが意味する物、それは―。

「この時を、待って いました!」

 ツバサは零距離で ナックルを放つチャンスを狙っていたのである。そして、ナックルにアーマーを集中させて防御が薄くなった所で零距離ブラスターを放ち―。

「まさか、マントを アーマーに集中させている所を狙っていたのか―」

 ブラスターの直撃 を受けたバスターは、その場で倒れる。この瞬間、ツバサの勝利が確定したのである。

「白熱したバトルを 制したのは、何と夏乃ツバサ選手です!」

 ユニオンがツバサ の勝利を宣言し、その直後には拍手と歓声が、ネット上でも拍手が鳴りやむ事はなかったという―。

 

 一方で、ブラック エッジと焔の試合は予想以上の短期決戦となった。

「まさか、お前と当 たるとは予想外だった」

 ブラックエッジ、 彼は第1回にも出場していたヒーローコスチュームの参加者だったのだが、ショップ専属のマスコットキャラと言う事もあってショップ公認で強化パーツが支給 され、まさかの決勝まで進出を果たした。

第1回が本戦には進出したが途中敗退と言う成績を考えると、物凄い進 歩のようにも見える。スーツは、以前とは違ってヒーローモチーフなのは共通しているが、右腕の大型アームに近代ヒーローのような特殊スーツ…第1回でアメ コミ調の衣装だったのが嘘みたいな進歩である。

「こちらも、第1回 と同じスーツと思ってもらっては困る―でござる」

 焔のスーツも第1 回とは違い、忍者モチーフとしたスーツに様変わりをしている。変化したのはスーツだけではなく、武装も刀のみだった前回とは違って―。

「まさか、あの体制 は…」

 ブラックエッジ は、攻撃される前に一撃を与えて動けなくさせる作戦に出た。大型アームの破壊力はバスターの使用する武器に匹敵する程ではないが、全参加者の中では上位ベ スト10に入る威力を持つ。

「愚かな―」

 焔の一言―その直 後、ブラックエッジには何が起こったのか理解できなかった。視聴者や藍坂、周囲の観客も無言の状態になっていたのである。

「では、今の瞬間を スーパースロー映像でご覧下さい―」

 アナウンサーが冷 静に進行を行い、スタジオにある大型ビジョンには、先程のブラックエッジが焔に接近しているシーンが映し出されていた。

「これは―?」

 藍坂がスロー映像 で映し出された剣閃の数に驚いていた。焔が喋る前の瞬間、ブラックエッジは秒間20以上という回数斬られていたのである。それが、5秒間続いたという事は ―。

「あれだけの斬撃 を、わずか数秒に―」

 焔が放った1回の 斬撃は微力な威力だとしても、それを100回以上も受けたブラックエッジはステージの上に倒れた。アーマーを細かく確認すると、大小様々な無数の亀裂も確 認できた。

「これで、決まりで ござる」

 ツバサの白熱した バトルとは別に、焔の瞬殺とも言えるバトルも観客を驚かせるという意味では成功と言えるのかもしれない。

 

『少し前には、ス ポーツ系の番組でアクシデントとか頻発して、最終的には番組が打ち切りと言うのがあったが―』

『まるで、スポーツ 番組ではなくアニメかオンラインゲームを見ているような展開だったような気がする』

『あれだけの事を可 能にしているのが、例のスーツなのかもしれない』

 ネット上では公認 ショップで買えるスーツが、ミュージックユニオンのド派手とも言えるような演出や白熱したバトルを再現できるのだろう…と言う流れになっていた。