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2:バトルの始まり

 

 第1回放送の翌 日、ミュージックユニオンの公式ホームページでは予選へのエントリーの為に大量のアクセスがあったのである。

『これは、もう少し タイミングを待った方が良いか―』

『参加人数制限はな いが、多ければ予選が厳しい戦いになるのは間違いない』

『予選は明日の土曜 日、予選の種目はシューティングとハイスピードの2つ―』

 土曜日に行われる 予選は2種目が行われる事がホームページで発表されている。

【シューティング― 出現するターゲットを正確に撃破し、ハイスコアを狙えるかを競う競技です】

 シューティングは クレー射撃のような競技である。的は発表された概要には書いていない為、詳細は不明のままだ。

【ハイスピード ―400メートルのトラックを3周し、如何に最短タイムを競う競技】

 ハイスピードは俗 にいうトラック競技のような物らしい。しかし、400メートルトラックに壁やハードルと言った障害物が置いてあるという変わった競技である。

【なお、これらの競 技はレンタルで貸し出されるスーツを装備して競う形になります】

 最後の一文に妙な 事が書かれていた。スーツをレンタルするとはどういう事か?

『スーツと言えば、 第1回の放送でもスーツの機能テスト映像が流れたが…あれは凄いとしか思えなかった』

『あのクラスの能力 を持っているならば、機動隊等で配備されていてもおかしくない』

『あれだけの能力を 装着時に発揮出来るとしたら、反動に耐えられるだけの身体能力を持った人間ではないと―スーツの能力に耐えられなくて倒れる可能性もある』

『その心配はないよ うだ。予選の参加前にはメディカルチェックを含めた予備審査が行われる。そこで異常があれば、予選には出場出来ないようになっている』

『つまり、18歳以 上ならば誰でも参加は可能だが、それなりの身体能力を持っている事が前提条件…と言う事か』

 今回はレンタルで 支給されるスーツ、これはミュージックバーストを扱う為に必要なパワードスーツのような物…と番組中では説明され、新聞等でもセット運用が前提となってい る事が書かれている。

『スーツに関して は、番組でカスタマイズ等も可能だと言っていたが―この辺りは今回の予選参加者の人数等を見極めての実装かもしれないな。予選に誰も来なかった…ではカス タマイズがあったとしても―』

『ショップに関して は既に草加市内にオープンしている公認店舗があるらしい。そこで購入した物を使っても参加可能…と説明には書いてある。もしかすると、レンタルスーツで参 加料金が取られるシステムかもしれない』

『レンタルでは 500円、公認ショップで一式を揃えると安く見積もって5000円と考えると―何回も参加する場合はスーツを買った方が得かもしれない』

『レンタルでは、最 低限のパーツカスタマイズのみしかされていない。自分にベストのカスタマイズをする為にも1回以上参加する場合はスーツショップに立ち寄るのが有効だろ う。既に自分もスーツを注文済で、予選当日に受け取る事になっている』

『予選のエントリー やメディカルチェック等では参加料金等は取られない。レンタルスーツの代金である500円が最低必要なお金と言う事になる―2回目以降の予選では1000 円と書かれていたから、500円と言うのは初回限定と考えるべきか』

 スーツは既に公認 のグッズショップで売られているのだが、自分用のカスタマイズをするとなると予算がかかる。そこで、今回はレンタルスーツのレンタル料金を下げて参加者を 集めようと言う流れになっているのかもしれない…とネット住民は考えている。既に数名は参加表明をしており、更にはスーツも発注した人物も書き込みをして いた。

『予選落ちしても出 場は何回でも可能らしいが、ドーピングや違法カスタマイズは失格になる事が書かれている。それ以外にも書類不備やスーツのメンテ不良等も警告が出るらし い。その場で直せれば参加は出来るが、同じ事を2度もやると失格になるようだ。失格でも予選1回分の出場資格がなくなるだけらしいが―』

『匿名参加も可能ら しい。ハンドルネームや芸名、ペンネームでもエントリー自体は可能のようだな。希望者には顔を隠す為の覆面も支給されるようだな。決勝が生中継の可能性が あり、編集は出来ない事が参加者への注意で書かれているが…』

『スーツはレンタル されるが、グッズショップに聞いてみた所、ミュージックバーストの量産型も必要だと言われたのだが…こちらはレンタルがあるのか?』

『ミュージックバー ストは、今回の予選では使わないだろう。おそらくは2次予選や準決勝辺りで使う事があるだろう―』

 ネット上では、既 に盛り上がりを見せているミュージックバーストとミュージックユニオンだったが、その状況を見て不満に思う人物もいたのは事実である。

 

「遂に、向こうが動 き出したか―」

 第1回の録画を見 ていたのは、黒のコートに防弾チョッキ、腕を見ると筋肉が絶妙なバランスで付いているような雰囲気がある。

「アンノウン様、ど うやらシオンが動きを見せ始めたようです―」

 チェイサーが会議 室に現れ、アンノウンと呼んだ人物に現状を報告する。

「遂に向こうが動き 出したか―既に我々が宣戦布告をした事を、シオンが慌てている可能性もあるが…」

 

 時間はデジタルク リーチャーが都内で暴れていた4月1日までさかのぼる。

『今まで日本経済を 立て直すのに貢献した超有名アイドルを切り捨てた。たった一度の不正が原因で同業者を含めて全てを規制しようと言う政府は間違っている。我々、アヴェン ジャーは政府が言う【超有名アイドルによる人心掌握】が潔白である事を証明する為にも日本政府に牙をむける事になりました。超有名アイドルをご存じの皆様 ならば、我々の言い分が正しいという事を理解してくれると信じております―』

 新宿や渋谷、その 他のビルに設置された大型ビジョンに映し出された白虎という架空の獣をモチーフとした覆面を被り、黒いコートに防弾チョッキと言う姿のアンノウンだったの である。

『デジタルクリー チャーは、我々が総力を集めて作りだしたデジタル化された怪物を呼び出す事の出来るシステムです。このシステムのメインとなるのは、超有名アイドルの楽曲 です。デジタル化された楽曲を自分の手にあるコモンプレイヤーに読み込ませる事で―』

 アンノウンはコモ ンプレイヤーを起動させて、そこから鳥のようなモンスターを呼び出したのである。これを見た市民は驚きを隠せないでいた。

『このようなモンス ターを生み出す事が出来るのです。都内で暴れまわっているのは超有名アイドルとは違った楽曲で生み出したモンスターと言っても過言ではありません。超有名 アイドルを信じる事、それは平和へと続く第一歩なのです。今から、このモンスターが放つ光で、都内に現れたモンスターを全て消滅させてご覧にいれましょう ―』

 次の瞬間、鳥型モ ンスターが口から放った光線を浴びるような形で、都内等に現れたデジタルクリーチャーはすべて姿を消したのである。

『もう一度言いま す。日本政府は直ちに超有名アイドルの規制法案を廃案、超有名アイドルを優遇する法案を成立させる。この2つが成立する事で、再び日本経済は栄光を取り戻 す事が出来るのです―』

 そして、アンノウ ンの放送は終わった。それを確認したチェイサーも、何かを確認後に本部へと戻ったのである。

 

【我々は黒歴史とし て扱われた超有名アイドルを信奉する者。日本経済を立て直すまでに至った我々を目先の出来事だけで追放同然の扱いにした事に対して復讐をする―】

 あの放送の後に 様々なメディアが取り上げたのは、半数以上が例のビラにも書かれていた一文を読み上げた物ばかりだった。政府の情報操作かどうかは判断できないが、週刊誌 等のメディアサイドが売り上げ上昇等を狙って意図的に書き換えたのか…と。全ての文章を掲載したメディアやニュースサイト等もあったのだが、有名なサイト が取り上げたのが例の一文だった為、アヴェンジャーの認識は超有名アイドルを神とあがめる組織…という物が大半になっていた。

「今回のデジタルク リーチャーによる都心部へのけん制は、こちら側の宣戦布告や総攻撃の予告に書き換えられている所が半数と言う事に―このままでは、アヴェンジャーは本来の 目的を見失う結果になるのは…」

 チェイサーはアン ノウンに進言するが、逆にアンノウンは笑い飛ばしていた。

「面白い。向こうが 情報戦に出ると言うのならば、こちらにも考えがある。4月3日に例の予選があるらしい。その予選に我々の刺客を送り込み、そこで超有名アイドルが正しいと いう事を参加者に分からせるのだ!」

 こうして、アヴェ ンジャーとシオンの戦いは幕を開けたのである。

 

     2―2

 

 4月5日、草加駅 近くにあるビルの一角ではミュージックユニオンの関連グッズを売る臨時ショップがオープンしていた。スーツのレプリカやお土産商品、更には司会をしている ユニオンのフィギュアまで売られていたのである。

『ここまで盛り上が るとは…』

『幸先の良いスター ト…と言いたい所だが最初だけで大コケする可能性も―』

『超有名アイドル商 法が規制されて、方向転換をした証拠じゃないのか?』

 ネット上でも、こ の盛り上がりに関しては賛否両論があった。成功するかどうかはテレビの第2回放送が始まってから…と判断する者も少なからず存在する。過去に、アトラク ションでの事故によって番組が打ち切りとなった事例もある。序盤の盛り上がりだけで番組その物が打ち切りにならないように…と祈る者も存在している。

『超有名アイドルが 今も活動していたら、この現状をどう思っているのか―』

『向こうは利益が出 れば、それでいいという活動方針だったからな。下手をすれば、全ての業界が超有名アイドルオンリー―最終的には別の病気が出てきてもおかしくない』

『それだけ、芸能事 務所の利益優先型アイドルの評判が悪かったという証拠だろう。日本政府も我慢の限界で規制をかけたような流れだったからな…例の事件がなくても』

『つまり、超有名ア イドルの自爆と言う事になるのか―あの事件は』

 ネット上では、超 有名アイドルの行き過ぎたメディア進出で、一歩間違えれば超有名アイドルで世界征服とも取られかねない方向になった事が規制法案を生み出すきっかけになっ たのでは―と考える動きが大半を占めていたのであった。

 

「悪くないわね…こ のチョコ焼きという食べ物も―」

 チョコ焼きと言う タコ焼きの中に入っているタコをチョコレートに変えたようなお菓子を食べていたのは明日川セナだった。彼女は予選に出場する為、荷物をアタッシュケースに 入れて移動中という所だった。そこに珍しいお菓子を売っているコンビニを見つけ、飲み物と一緒に購入したのである。

「ミュージックユニ オンか。音楽業界には全く興味はないが、決勝での優勝賞金2000万は悪くない―」

 明日川は、参加者 募集のポスターを見ていた一人の男性を見つけた。上半身は黒いスーツ姿なのだが、下はジーパンと言う変わった外見をしていた。

「確か、会場へは ―」

 彼は慣れない手つ きでスマートフォンで何かを調べようとしていた。何を調べようとしていたのかは分からないが、ポスターの前にいるという事を考えると…?

「会場へは、あの直 通バスで行く事も出来ますが…」

 明日川は彼に直通 バスへ乗る方が早く到着する事を教えた。すると―。

「ありがとう。自分 は、こういった機械にはなじまないようで、説明書を見るたびに頭を委託する事もある…。もう少し、直観的に動かせるような物もあればいいのだが―」

 お礼を言った彼の 声を聞いて、何処かで覚えが…と明日川は思った。

「もしかして、メタ ト―」

「その考えは間違っ ている。自分には黒沢来都という名前があるからな―」

 黒沢来都(くろさ わ・らいと)、そう明日川に名乗った彼は、バス停の方へと向かって行った。

「やっぱり、聞き違 いだったのかしら―」

 明日川はチョコ焼 きを食べ歩きながら、近くのバス停へと向かった。黒沢に教えた物とは別だが、このバスも会場へと向かうルートを通る物である。

 

 草加市の広場で行 われているのは、トラック競技であるハイスピードのセット準備だった。どうやら、シューティングは屋内施設で行われるような気配である。

「これから、当日分 の書類受付を開始いたします―既に前日までに受付が終わっている方はメディカルルームへ向かってください」

 スタッフが拡声器 を片手に並んでいる当日枠の列に並んでいる列を誘導する。その数は軽く200人は超えるだろうか。受付は予定の午前10時を午前9時30分に変更したのだ が―それでも大量の参加希望者をさばき切れるかは若干の不安がある。

「すみません、ここ の項目が書かれていませんので記入をお願いします―」

 テント内の受付で は、スタッフが10人体制で並んでいた参加予定者をさばいていく。

「既にネットで受け 付け済の方は、向こうのメディカルルームの方へ向かってください」

 男性スタッフの一 人が、参加者をメディカルルームへ向かうように案内する。

 

「年齢確認をします ので、免許証等の年齢確認が出来る書類をお願いします―」

 別のスタッフは書 類の年齢に何かの不審を抱き、免許の提出を求める。すると、彼は免許証を提出したのだが―。

「申し訳ありません が、この免許証では予選のエントリーは出来ない事になっています」

 彼が提出したの は、写真を偽造した免許証だったのである。写真部分を触ると、別人の顔写真が出てきた為、他の人物から免許証を借りて参加したのだと言う事が明らかになっ た。彼は賞金目当てで免許証偽造での参加を思いついたらしい―結果は一発で不正が発覚して参加権利を失う事になった。

「やはり、賞金 2000万円が上手い具合に餌として機能しているようだな」

「犯行理由として は、アイドルグループを超有名アイドルにする為のCD購入の資金源と言うのが有力だな」

「向こうとしては再 び利益重視型のアイドルを生み出さない音楽業界にする為に、色々と対策を考えているな―」

 不正登録を考えて いた少年がすぐにかけつけた警察に連行されるのを見ていた他の参加者がつぶやく。マスコミも半径5キロ圏内へはヘリ取材も禁止と言う厳戒態勢の為、5キロ 圏外でパトカーが警察署方面へ走り去るのを見かけたマスコミ各社は、パトカーを追跡する為に大半が向かってしまった。おそらくは運営委員会の計画通りなの かもしれない。

 

「数分程中断しまし たが、これから参加受付窓口の再開をいたします」

 犯人の逮捕後、何 事もなかったかのように参加受付が再開された。警察へは目撃していた関係者を一緒に行かせることで、何とか並んでいる参加希望者を…と言う事なのかもしれ ない。

「警察の手際の良さ に加えて、中断していた受付が早くも再開されるとは―」

「話が出来過ぎてい るように見えるな。犯人に関しては事情聴取が始まってみないと、何ともコメントが出来ないが―」

 あまりにも手際よ く現れた警察、おそらくは周辺警備や並んでいる列への割り込み等を防ぐ為に派遣したと思われるのだが、それが思わぬ形で犯人を逮捕という流れになった事に は周囲も違和感を持っていた。超有名アイドル復権を企む残党等がまぎれているのではないか…と思う人物が出てきてもおかしくはない。

 

「スーツ込みです か…今からチェックをしますのでしばらくお待ちください―」

 メディカルチェッ クも終わり、スーツ持参でチェックを受けていたのは、明日川だったのである。彼女は、既に前日に参加表明をしており、列に並ぶ事無くメディカルチェックを 受けてスーツのチェックを受けている所だった。チェックする男性スタッフの手にはコンビニ等でも見かけるバーコードの読み取り機械を思わせる物を握り、 スーツの各所にある何かを読み取っているようにも見えた。

「問題なしと確認で きましたので、スーツに着替えても大丈夫です。予選は11時に開始予定に―」

 特に問題はなかっ たので、明日川はテントとは別施設に用意された着替え室へと向かった。着替え室は男性と女性用で区切られており、そこでスーツに着替えるようだ。中には スーツと言うよりも単純にプロテクターのみという物も存在し、運営委員の許可があればデザインに縛りはないらしい。

『唯一の難点がある とすれば、既存作品のコスプレとか…その辺りは作品によってはNGらしいな―』

『それ以外にも、警 察や警備員等と間違えられる可能性のある衣装も許可が出ない事を公認ショップで聞いた』

『外見以外では不正 パーツ流通防止の為にショップ以外の改造パーツは禁止、更に言えばオークションで売買する事も禁止にしているらしい。ガワは純正パーツに見せかけた不正改 造パーツと言う物がロケテスト版の時点でオークションに大量流通していた事に由来するらしい。超有名アイドルのCDが特典なしで100万枚も不正流通して いた事例を踏まえた処置なのかもしれないが…』

『オークションで大 量流通と言うと、超有名アイドルで封入特典なしCDを100万枚突破が確定した当日に80万枚がオークション流通して、それが超有名アイドル商法の規制法 案のきっかけになったらしい…という事も過去にあったな―』

 ネット上では、い よいよ予選が始まると言う事で待機しているネット住民がチャットなどで時間を潰していた。

 

「まもなく、予選種 目のハイスピードが実施されます。番号札、100番までの選手は所定の場所へ集まってください―」

 受付などが終了し た外ではハイスピードが行われるとの事で放送による選手の呼び出しがされていた。所定の場所には80人程が既に集合し、残りメンバーを待っていた。

「偶然だな、駅で 会った人物と対戦する事になるとは―」

 スーツを装着済み のセナが最初に遭遇したのは、何と黒沢だったのである。

「露出度の高いスー ツは失格対象になるとは聞いていたが…」

 黒沢が失格対象に なるのでは…と思っているのには理由があった。セナのスーツは肌が露出している部分が皆無ではあるが、ボディライン等が若干強調されており、胸の形も分か るような物になっているからだ。

「スーツ及びアー マーも公認ショップで購入し、デザインも運営委員会に許可を得ている以上は問題ないと思うが―」

 セナは黒沢の外見 を見て、本気で参加するつもりなのか…と目を疑った。

「スーツに関しては レンタルだが、オプションに関しては自分で選択、その後に運営委員会に許可をもらっている―」

 黒沢のスーツは外 見が共通のレンタルスーツだが、装備しているオプションパーツは軽装型のブラスター装備型肩アーマーと胸部分の黒色をしたクリスタルをベースにしたブレス トプレートのみという装備だった。

「メットは任意とは いえ、本当に勝つつもりでいるの?」

 セナは黒沢に質問 をするが、それを黒沢が答える前に彼はトラック内に向かってしまったのである。

「参加者の中には、 極限まで安全に考慮して全身パワードスーツをセレクトする参加者もいると言うのに…彼は怪我をする事も恐れていないのかしら」

 今回は予選と言う 事もありネット生中継はされているのだが、テレビでは一部選手に限定して放送される事になっている。この手の番組の場合、アトラクションによっては事故が 付き物になっている。それに配慮する形でパワードスーツのレンタル、あるいはショップで購入したスーツで参加する事が義務付けられている。それでも、事故 が絶対起こらないとは断言できないのが、人間のやる事の限界なのかもしれない。

「この世界には魔法 や超科学と言ったような一種のご都合主義展開は存在しない―そんな中でシオンの狙いは何なのか…」

 セナはシオンが今 回のミュージックユニオンを開催した狙いが分からなかった。超有名アイドルが存在を許されなくなった世界、音楽業界的にはドル箱とも言われた超有名アイド ルが黒歴史となっても、それを必要とする業界は存在する。それを規制する為の法案も成立している中で、シオンは何の目的があってミュージックユニオンのよ うなイベントを開催する事にしたのか―。

 

「それでは、1番か ら20番までの番号札を持った参加者はスタートラインに集まってください。その際、番号札と同じ番号が書かれている位置に―」

 1番から20番ま での20人が、それぞれの番号が書かれた位置でスタートを待つ。

「ハンデ50…と 言った所か」

 黒沢は最後列から のスタート、先頭にいる参加者とのハンデは約50メートル―。

「ルールとしては ゴールまでのタイムを競うようだが…あのコースを考えると、転落で失格等も考えられそうな気配がする―」

 別の参加者はト ラックの途中にある鉄球を避けていく1本橋等のコースを見て、タイムばかりを気にすると、予想外の所で足をすくわれるのでは…と考えた。

「1本橋を早く渡る 事と最終関門になる大きな壁―これを早く突破してタイムを縮めるしか方法はないか」

 更に別の男性参加 者は、1本橋も重要なエリアだが、それ以上にチェックポイント直前に設置された3メートル近い壁が最大の難関になるのでは…と思っていた。

『あの壁、ロープな しでどうやって登ればいいのか―』

『良く見ると、壁に 凹凸のような部分がいくつかあると言う事は、あれを上手く利用して登る―というパターンかもしれない』

『壁を登り切れば、 その先は直線のみと言う事を考えると、壁の地点で体力をどれだけ残せるかが勝利の鍵だろう』

 多数の視聴者や観 客が見守る中でバトルが始まったのである。

 

      2―3

 

 ハイスピード、 400メートルのトラックを3周して、そのタイムを競うのだが、実際は障害物競争の概念が高いスタミナ系の競技だったのである。途中には、足場が1人分と いう1本橋を渡るエリアや3メートル近い壁を登ると言うエリアも存在する。

「1本橋はもらっ た!」

 元陸上選手と言う 参加者が橋を渡ろうとした、その時に想定外のハプニングが起こったのである。

「こんな所から鉄球 が―」

 アトラクション系 の番組では横から鉄球や鉄棒が出てきて、それを上手く回避するというエリアが存在する。しかし、鉄球が飛んできたのは横ではなく―参加者の真上からだった のである。上手く対応出来なかった参加者は橋から転落して失格となった。

「上と言うよりは、 全方向から飛んでくる鉄球を避けていく―と言った方が早いか」

 転落していく参加 者を横目に、黒沢は何事もなかったかのように1本橋を通過していった。それを見ていた他の参加者も黒沢に付いていく事が精いっぱいだったのである。

『既に20名が10 名に減ったな―』

『1本橋だけではな く、吊り天井を避けていくエリア等も難関か―アトラクション番組等よりも簡単そうに見えてしまうのは、あのパワードスーツの影響かもしれない』

『あのスーツ自体 が、身体能力を何倍かに上昇させているような印象がする。あれはリアルチートというレベルではないな―』

『さすがに、あの スーツが実際のスポーツ競技に使えると本気で思っているのか?』

『確かに世界のス ポーツ競技では使える訳はないが、アマチュア競技だったら―』

 パワードスーツの 効果で身体能力が数倍にも増強されていると言う事は、視聴者も気付き始めていた。おそらく、ミュージックバーストを扱う為には相当な能力が必要なのでは… と思う位に。

「この壁、どうやっ て登れば―」

 壁の高さは3メー トル程度、走り高跳びや跳び箱等で見かけるような高さである。

「なるほど…その為 のパワードスーツか」

 何かを思いついた 黒沢は、何と1メートル弱の助走距離でハイジャンプを実行し、何と軽々と壁を超えてチェックポイントに一番乗りを果たしたのである。

「トップはあいつで 確定かもしれないが、どうやって壁を越えるか―と言うのは分かったかもしれない」

 他の参加者も、黒 沢が実行したハイジャンプを試すのだが…上手くジャンプ出来たのは5人程で、残りは壁を登ると言う手段で何とかチェックポイントに入った。

「パワードスーツの 機能を把握した状態でハイジャンプを実行したと言うのか―」

 壁登りでチェック ポイントに入った男性は黒沢が実はスーツの能力を全て把握していたのでは…と思っていた。

『レンタルスーツっ て、あれだけの能力があるのか?』

『レンタルスーツは 基本性能が全て同じ、追加するオプション等で性能変化―という流れなのかもしれない』

『説明書はホーム ページでもダウンロードできるが、会場でも直接チェック出来るようになっているはずだ―』

『つまり、黒沢と言 う参加者は事前にスーツの把握をしていた―と言う事か?』

 ネット上では黒沢 が事前に能力を全て把握していたのでは―と盛り上がっていた。

「どう考えても、お かしい―。彼はスマートフォンの操作も上手く出来ないのに、どうしてパワードスーツのオプションや能力を全て把握しているのか」

 セナはネット上の 意見とは逆の考えをしていた。彼は、スマートフォンも上手く扱えない事を1回目撃している。そんな人物がスーツの能力やオプションを瞬時に把握できる物な のか―と。

 ハイスピードの1 回目は、黒沢が1位を記録し、それ以外に完走出来たのは4人と言う結果だった。事実上、1回目の競技だけで15名が脱落した事になる。

「この競技を突破し なければ、次の競技へ進めないのか―難しいな」

 無事に完走出来た 男性はリポーターの女性の質問に、こう答えたという―。

 

 ハイスピードの3 回目、そこに登場したのはセナだった。彼女以外にも、コスプレイヤー出身の女性や元超有名アイドル、動画サイトでダンサーをやっている人物―非常に個性豊 かな職業の人物達が同時にバトルをする事になった。

「1本橋、これで切 り抜ける!」

 セナは腰に固定さ れたビームサーベルを構えて、鉄球を弾き飛ばして1本橋を突破という強引な作戦に出た。3メートルの壁も黒沢が披露したハイジャンプで突破し、セナ1人の みが完走と言う非常に厳しい戦いとなったのである。

『これは意外だな。 2回目は3名が突破して今回は1名とは…通過者なしの全滅と言う回も出てくるのだろうか?』

『鉄球を弾き飛ばし てはいけない…とはルールには書いていないからな。これは、セナの機転が影響したかもしれない』

『それにしても、次 の競技の準備が出来ていないとは…と言うよりも参加者が予想以上に膨れ上がったのが原因なのか―』

 現状ではハイス ピードの競技のみが続けられ、次の競技は準備が完了したという告知も入っていない状況である。

 

「これは、予想外と いうべきか―」

 近くのレストラン でコーヒーを飲んで昼食にしていたのは黒沢だった。既に10回目まで突入しているのだが、参加者の合計が800人近い為か最初の予選だけで翌日に2次予選 を開催…という雰囲気にもなりそうな状況になっていた。

「おまたせしまし た。本日の日替わりランチになります―」

 ウエイトレスの女 性が黒沢のテーブルに置いていったのは、マカロニのミートソースと特製トースト、一口ハンバーグ、小ライスのセットである。トーストにハンバーグを挟んで サンドに出来る仕様にもなっているが、黒沢は敢えてバターをトーストに乗せる。

「注意すべきはツバ サという人物か―」

 黒沢はスマート フォンから得た情報を細かくチェックしていた。慣れない手つきなのは仕方がないかもしれないが、これでも何とか操作を覚えようとしている努力は見える。

 

『あの記録に迫るス ピードか―』

『夏乃ツバサ―一体 何者だ?』

『ツバサも凄かった が、その後に出てきた藍坂も動きは良かったな』

『シューティングで は、出てくる的を何個撃破できるか…という競技になりそうな気配もするが、気になるな―』

 ハイスピードも 30回目になるが、突破できた人数は250人と半分以下に絞られていたのである。そんな中、とんでもない人物が記録を塗り替えるような記録を叩きだしたの だが、この記録に関して審議の赤ランプが点灯したのである。その間、予選は一時中断される事になった―。

 

「審議か…予想出来 ていたとはいえ、よく厳重なチェックをすり抜けた―と言うべきなのか分からないわね」

 予選後にシャワー を浴びようと考えていたのだがシャワー室が満席だった為、センター内の食堂で牛丼を食べていたのは藍坂だったのである。隣には、何故かセナがドーナツを片 手にノートパソコンでデータのチェックをしている。セナと藍坂は、この会場で偶然知り合ったのだが―。

「純正パーツのガワ を被った不正パーツと言うのは、ホビーアニメでも滅多なことでは使いませんからね―。あちらの場合は、不思議な事が起こったとか…そう言ったノリで片づけ ている気配がしますが」

 セナが片手でパソ コンのキーボードを入力し、何かのデータを呼び出しているようにも見える。

「なるほど―。ロケ テ段階で不正パーツがインターネットオークションや闇ショップで流通している話は聞いていたけど―」

 藍坂も、これほど の状況になっているとは考えもしなかったらしい。それだけ不正パーツの横行は問題になりつつあったのである。

「売っている側は利 益さえ手に入ればそれでいい…と考えているのかもしれないけど、運営委員会からすれば、不正パーツを使った事で重大な事故が起きてからでは取り返しのつか ない状況になる。だからこそ、不正パーツ流通に関しては使用禁止、最悪な場合には使用者及び販売者を逮捕という事も辞さないでしょう―」

 セナはロケテスト 時代の事もネットで調べた知識位は知っていた。その当時は運動性能が3倍まで跳ね上がる、100メートルを1秒で走る事が可能―というスーパーヒーローも 顔負けの能力が使える不正なブーストパーツが流通していたのである。

「逮捕されたグルー プは、この資金で超有名アイドルのCDを大量購入し、CDチャートで1位にしていた…と言う事実もある位にロケテストバージョンはカオスだった―と語る ネット住民も多い。超有名アイドルの黒歴史化は、ロケテストが終わってから1カ月後位だから―」

 ミュージックユニ オンは、別名で何度か水面下のロケテストが行われていた。これがシオンの主導で行われたかは定かではないものの、このロケテでは不正パーツのオンパレード と言わんばかりのチート祭り状態だったのである。後に、不正パーツをインターネットオークション等で売りさばいていた超有名アイドルのファンクラブ会員が 全員逮捕されたのだが、これでも氷山の一角と政府は見ていたのである。

「ファンクラブ会員 の中には、中学生や高校生も混ざっていたと聞くけど―」

 藍坂はセナに言う のだが、セナは質問に答えようと言う雰囲気ではなかった。

『先程の30回での 1位入選者に関しては失格の判定となりました事を―』

 途中で放送が流 れ、1位入選の選手に関して失格の判定が出たと発表された。原因は不正パーツ使用による物であると同時に発表され、この選手には予選参加資格が半永久的に はく奪される事になった。

「今回の不正パー ツ、流通ルートは別に存在するかもしれない―」

 セナは、ある掲示 板のまとめサイトを発見していた。それは超有名アイドルのファンクラブ残党が利用しているスレでのやり取りなのだが…。

「これは…?」

 書かれていたやり 取りを見て、藍坂は驚きを隠せなかった。超有名アイドル復権の為に犯罪にさえ手を染める…そんな事を思っていたのかもしれない。

「ここまで来ると、 ファンと言うよりは投資家や転売屋等と同じレベルと考えておかしくはない―政府はアイドルその物が犯罪資金を集める資金源にされる事を恐れて、あの規制法 案を成立させた。そして、その結果として反社会的組織も完全とは言えないけど、7割以上は解体に追い込む事が出来た。組織の資金源は色々だけど、超有名ア イドルのグッズ転売等が主な資金源だったと語る組織は全体の4割にも及んでいる…」

「気付かないうち に、純粋なファンも反社会的組織に資金を提供してしまった…と言う事なのね―こんな世の中にしたのは、間違いなく利益を優先して後先考えずに活動の幅を広 げていった芸能事務所―」

 セナの言う事に、 藍坂は一定の理解を示したのだが、それでも超有名アイドルが犯罪組織の資金源となっている事に対し、怒りを通り越して何も言えない状態になっていた。

 

『やっと終わったか ―』

『30分程の休憩を はさんで、午後2時からシューティングの中継をするらしい』

『もっと参加希望者 が並んでいたような印象があったが、1000人程だったのか』

『実際は、それ以上 の人数が並んでいたと思う。予選前の書類不備や違法パーツの装着で失格となったのが半数…と言った所か』

『賞金に目がくらん で、違法行為に手を出したのが、逆に仇になるとは予想もしていなかっただろうな』

『超有名アイドルの 元ファンも何人かエントリーをしていたようだが、書類選考や違法パーツ装着等で失格というケースが多かったらしい。参加出来たとしても、あの予選状況では 次の競技に残っている人数も―』

 1時30分近くに 第1競技の生中継が無事に終了、次は午後2時から第2競技の中継を行うと言う発表がされた。その間、ネット住民達は遅い昼食を取ったり、トイレに行ったり と忙しい様子である。

「やっぱり、超有名 アイドルのファンクラブが密かに混ざっていたのか―彼らの目的は関係ないが、アイドル関連の風評被害が多発した原因は間違いなく彼らにある。その過ちに気 付かなければ、アイドル復権も夢のまた夢となるだろう。そして、音楽業界は同人楽曲や音楽ゲームの楽曲が市場を独占する時代へと変化をする。本当の意味 で、芸能事務所や過剰な宣伝が無意味となる時代が、すぐそこに来ていると言うのに―」

 第2競技が行われ るホールの別室で今までの様子をモニターで見ていたのはシオンだったのである。彼は、密かに予選のデータを収集して新しいオプションや武装等を開発してい るのだが…。

「やはり、過ちは何 度も繰り返される―超有名アイドルによる事件は別の世界でも違う形で何度も―」

 シオンは苦悩す る。超有名アイドルによる事件はどの世界でも繰り返され、最終的には音楽ゲームの楽曲や同人楽曲等が超有名アイドルに代わって市場に進出する―それが繰り 返されるだけの歴史で良いのだろうか―シオンは別の道もあるはずだと模索していた。

「超有名アイドルが 全ての過ちを認め、再び音楽業界を他のアーティストと切磋琢磨していく事…これが理想とする音楽業界。現実は超有名アイドルが無限の資金力で―」

 考えても同じ結論 しか出てこない。超有名アイドルの無限とも言えるリアルチートの資金力を芸能事務所が黙認した事、それが政府の超有名アイドル規制法案に直結したと言って も過言ではない。芸能事務所側が対話と言う道を開く事をしない限り、音楽業界は再び超有名アイドルの独占市場となってしまう事には変わりはない。

「その為のミュー ジックユニオンと―」

 シオンは何かを考 えていた。

 

 ホール内では第2 競技であるシューティングが行われようとしていた。

「この競技では、先 程と同じように20人同時にスタート、最もスコアの高かった上位100名までが2次予選へ進出できます―」

 スタッフによる と、この競技が1次予選ラスト競技らしい。そうなってくると、第1競技でギリギリのメンバーにとっては負けられない競技なる。

「今回の20人に関 しては、下位の20人からスタートし、ラストは1位~20位のトップ20人という対戦カードになります」

 この方式では下位 の生放送には無関心になりがちなのだが、逆に下位19人と1位というマッチングを組んだとしても1位の選手が無双してしまう恐れもあって、これでは逆に面 白くない…と判断したのかもしれない。それに加えて、下位からスタートと言うのは逆転のチャンス残した…とも取れる。

「では、600 位~580位の参加者は準備を始めてください―」

 スタッフの誘導で 彼らが目にしたのは、何と様々な武器だったのである。ビームライフルのようなSFに出てくる武器から、実在銃器と似たような形をした物まで多種多様に用意 されていた。どうやら、これがミュージックバーストのレプリカと言う事らしい。

「何人かは既に ショップで購入済みという事だったのか―」

 ある男性がつぶや く。ツバサ、黒沢、セナ等と言ったメンバーはショップでミュージックバーストも購入済だったのである。スーツをレンタルした参加者の大半はミュージック バーストを所持していない為、こちらもレンタルする事になったらしい。

「そう言えば、第1 競技で使っていたのは反則じゃないのか?」

 髭を生やした80 年代のスーパーヒーローを思わせる外見の人物がスタッフに質問をした。帰ってきた答えは―。

「ミュージックバー ストに関しては、スーツとセット運用が前提の為、特に反則という判定はしておりません。違法なカスタマイズがされている物に関しては反則の判定を取ります が、公認ショップで購入されている物であれば問題はないと思います」

 意外な事に、第1 競技での使用は特に反則と言う判定は取っていなかったらしい。それに加えて、ショップで購入された物に関しては問題ないという答えも返って来た。

「第2競技では、 ミュージックバーストが必要不可欠になる為、こうしてレンタルを行っている―という事になります」

 

「何だ、このステー ジは!」

 ライブ会場で使わ れるホールを、そのままステージにしたような物だが、的のような物体は何も見当たらない。

「あれは、まさか ―」

 髭のスーパーヒー ローが指さす方向に現れたのは、何と4月に出現したデジタルクリーチャーだったのである。厳密にはデザインが若干似ている劣化コピー…。

『シューティングで は、一定時間内に出現するターゲット―今回の場合はデジタルクリーチャーを撃破してもらいます。ただし、向こうも攻撃をかけてくる事をお忘れなく―』

 スピーカーからス タッフの説明が入るのだが、攻撃を仕掛けてくる…と言う部分に引っかかる物があった。

「まさか、あれはオ リジナルと―」

 

「おいおい、冗談 じゃないぞ―」

 昼食から戻った黒 沢が中継映像を見て驚いていた。まさか、デジタルクリーチャーと直接戦うのが予選に入っていたとは―。最初に登場した20人は3分も経過しない内に全滅と 言う展開になったのである。

「これは、2次予選 に進出する100人が既に決まったと考えるべき―?」

 自分の背丈よりも 大きなバズーカを準備していたのはセナだった。下位の20人でも0体でリタイヤした例はなく、最低でも1体は撃破している。上位100名の中に入っていた としても、第2競技ですぐにリタイヤしてしまっては意味がないだろう。

「その後も未だに生 き残った参加者がいないとなると…厳しい戦いになるわね」

 藍坂は今のままだ と首位になっている人物でもわずかなミスプレイでリタイヤする可能性は否定できない。そんな事を思っていた。

「あの調子ですぐに 全滅が続くと…自分の出番がすぐに回ってくるって事かな?」

 アーマーのメンテ をしていたツバサは自分の出番がすぐに来てしまうのでは…と思っていた。メンテの方は完了していない状況で順番が回ると非常に不利になる。

 

「100位から80 位までの参加者は―」

 遂にトップ100 と言われる参加者に順番が回って来た。その中には、第1競技でスーパープレイを披露した黒沢等の名前がある。

「私の出番が来たよ うね―」

 セナはバズーカ砲 を背負ってスタートエリアへと向かう。それ以外の参加者はセナの背負っているバズーカを見て驚きのリアクションをしている。

『いよいよ、ネーム ドプレイヤーが出てくるか―』

『それにしても、セ ナのバズーカ砲…あれは立ち回り的には不利な気配が―』

『どんな武器を使っ ても、技術でカバーできれば上位に入ることだって可能だろう。それを証明したのは200位だった手裏剣使いが証明したばかりだ―』

『それよりも、 100位以下のメンバーが8割以上全滅と言う展開はどういう事―』

『つまり、これがデ ジタルクリーチャーと戦う事…なのかもしれない』

 デジタルクリー チャーとの戦いは命がけ…とまでは言いすぎかもしれないが、脱落者が続出したのには参加者の心構えが完成されていなかった事、賞金のみに目がくらんで本来 の目的を見失った事、超有名アイドルを絶対神とするグループがいた事等…脱落者が多い展開になったのには理由があった。

『そろそろ、始まる な―』

 そして、ここから は予想以上の展開は始まろうとしていたのである。