ミュージッ クユニオン

 

 テレビの電源を入 れると、そこには男性のテレビ局アナウンサーらしき人物と事務員のような服装をした女性司会者が映っていた。

『遂に始まりまし た、異色のエンターテイメント番組、ミュージックユニオン―』

 最初に喋ったのは 男性の司会者、見た限りでは局アナではなくフリーのアナウンサーのようにも見える。

 

 ミュージックユニ オン、それは視聴率で苦戦する視聴者参加型バラエティー番組に新たな風を送る為に企画された新番組である。

 この番組では、ラ ウンドごとの競技に挑戦して高得点を獲得する事で次のラウンドへ進み、最終的にはファイナルラウンドで優勝する事で別枠にて行われる決勝ラウンドへの出場 権と賞金100万円が与えられる。一度でも決勝ラウンドへの出場権利を獲得した選手は決勝以外のミュージックユニオンへ出場は出来なくなるが、出場権利を 得る為に何度もトライする事は可能である。

『今回は放送第1回 と言う事で、来週の放送から行われる予選ラウンドに関しての説明と参加に関してのルールを説明しようと―』

 次に喋ったのは事 務員を思わせる衣装の女性司会者だった。胸に付いている名札らしき物にはユニオンと書かれている。

 

 参加資格は18歳 以上であれば、誰でも参加可能との事らしい。18歳以上と言う制限は賞金との絡みらしく、保護者同伴でも18歳未満の参加は不可能との事。競技に関しては 男女共通で5競技が行われる。最終的に月のラスト放送はファイナルラウンドと位置づけられ、この勝者が放送予定されている決勝ラウンドへの出場権利が得ら れる。最終的には決勝ラウンドでの優勝者に与えられるのが賞金2000万円と…。

『副賞として、こち らが贈られます!』

 ユニオンが手を叩 いて、何かを呼ぶ仕草をする。すると、何処からか厳重なアタッシュケースを持った白衣にメガネという外見の男性が姿を現した。彼こそが、今回の番組を企画 した張本人、名前は水凪(みずなぎ)シオンという…。

『このアタッシュ ケースの中には、皆様にはお見せできませんが…ミュージックバーストと言う音鏡武装(おんきょうぶそう)が封印してあります。4月1日に発生した事件は記 憶に新しい方が多いでしょう。あの事件で出現したデジタルクリーチャーこそ、我々が音楽業界を立て直すのにも最大の障害となる存在なのです―』

 シオンは力強く語 る。彼が、そこまで音楽業界に力を入れる理由は何だろうか。

 

 それは、この番組 が始まる数年前まで話はさかのぼる―。