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3…合戦の幕は上がった。

 

合戦の始まる数十年前、日本の原子力発電所が突如として機能を停止するという事件が起こる。諸外国の原子力発電所は問題がないのに、日本
のみが止まるのは非常におかしな事だった。すぐに水力や風力、地熱発電等で電気をまかなおうとしたが、当然の事だが限界がある。一部地域で
は大幅な節電を強いられ…このままでは日本経済すら歯止めが…という所まで来ていた。

 

原子力発電所が突然機能停止したのとほぼ同時に、日本の各地で奇妙な現象が次々と立て続けに起こった。精霊の出現や魔法書の発掘に始ま
り、魔法遺跡の出現、果ては魔法が使えるように…。まるで、ファンタジーの世界がやってきたかのような感覚だった。

 

当時の日本政府でも今回の一件を国民全てに説明するにはさすがに知識が不足していた。

そこで、有識者による対策室を設置し、魔法書の解読等が始まった。そんな中、古文書に記されていた精霊の力等で動く発電器…後の魔力発電
の元を発見した。

「この魔力発電を使えば、現在の日本のエネルギー問題も一気に解決する」

そして、魔力発電が急ピッチで作られ…わずか半年で全ての原子力発電所を魔力発電所に改修、エネルギー問題はクリア…出来たかに見えた…。

 

「魔力発電といえど、これだけのパワーを一気に電力に変換すれば…大変な事になる…」

魔力発電には一つ問題点があった。それは魔力発電が生み出すエネルギーの量にあった。

小石程の魔力のコアで日本全土の約5年分のエネルギーを生み出す事ができるのである。

つまり、必要以上に発生する過剰なエネルギーをどうするか…と言う事であった。魔力発電が使えるのは日本のみで、他の国に変換後のエネルギー
を輸出する事は事実上不可能であった。そこで、更に古文書を読み解くと…そこには、魔力を使った武器や魔法の杖の製造方法、過剰な魔力の再
利用方法を発見した。この方法を使えば、魔力発電の負荷も減る事になるだろう…と。

 

「まさか、神聖東京投資家が使っている武器に始まり、合戦で使用される武器や防具、アイテムの原点が魔力発電にあるとは…」

合戦2日目、群馬及び栃木連合軍の決闘者となった瀬戸飛天がある本を読んで驚いた。

「これなら、沖縄が参加辞退した理由が分かるような気がする…」

瀬戸は思った。これだけの技術と米軍の軍事技術を融合すれば、とてつもない物が出来上がるのでは…と容易に想像がついた。

「そして、その矛先は…」

これ以上は考えるのを止めた。今は合戦中であり、他国も容易には日本にコンタクトを取る事は不可能になっている。魔力によるジャミングでの通信妨
害の影響である。

「でも、何で日本だけ魔法が使えるようになったのだろう…」

瀬戸の疑問は最もだった。他の諸外国でも魔法や錬金術等の書物があり、その昔には魔女狩りなる物まで存在していたからだ。魔法とはほぼ無縁な時
代が多かった日本で…どうして魔法が使えるようになったのか…。

 

一説には日本には魔法を扱った本が多数出回り、それらの本に影響され、魔法を求めていたのでは…と言う説もあるが、最も有力な説とされるのは、21
世紀初頭に一種の魔法ブームが到来、世界各地からあらゆる魔法やファンタジー世界の関連の書籍が出回ったから…とされている。丁度、その頃に神
聖東京投資家の元となった作品が発表され、一大ブームとなった。それから、数年後に実際に神聖東京投資家が現れたのである。

 

「魔法なんて、本当にありえないと思っていたのが…今は魔法で経済が成り立っているなんて…嘘のような本当の話だからねぇ…」

そして、瀬戸は会場へと向かった。会場は福島県である。

 

その一方で破竹の勢いで勢力を伸ばす県があった。島津香奈美を決闘者とする鹿児島県である。反対派勢力の佐賀県、熊本県と一時的な同盟を結ん
ではいるものの、彼女の戦力は常識を覆す物だった。

「こんな馬鹿なことがあっていいのか?」

賛成派の宮崎県の決闘者軍団、宮崎レンジャーズのリーダーが息を既に切らしている。

「宮崎代表の宮崎レンジャーズと言えば、決闘者の中でもコンビネーションを主とする部隊…それがあっさりと…!」

島津が自分の背丈以上の大剣である鬼島津を

振り回している。彼女の方は、まだ余裕を見せている。

「彼女が味方で本当に良かったわ…」

セーラー服姿の熊本代表決闘者が呟く。自分の武器であるブーメランでも、さすがに彼女相手ではまともにダメージを与える事は不可能だろう。

「さすが、鬼島津のあだ名は伊達ではないわね…。このままだと、長崎も陥落しそうな予感がする…」

スパイ映画に出てきそうなスニーキングスーツを着ているのは、佐賀代表のネイ=ソニック。自己流ではあるものの格闘技を得意としている決闘者である。

「さぁて、止めといきますか!」

彼女は鬼島津を振り回し、上空から奇襲を仕掛けようとした宮崎代表の一人を捉えた。

「この鬼島津に勝てるとは思わない事ね!」

数メートルはするであろう大剣を軽々と振り回して放つ必殺技である鬼螺旋、その一撃は奇襲しようとした宮崎代表の一人をあっさりと地面に叩きつけるこ
となど、容易な事であった。

「もはや、勝ち目はない…か…」

宮崎県知事が島津に降伏し、鹿児島の勝利で合戦が終わった。

「やっと、終わりましたか…長かったですねぇ…」

島津が大剣鬼島津から手を離すと、性格は一変した。先ほどの好戦的性格からひっこみ型の性格に変わった。

「とりあえず、賛成派を無理矢理反対派に回そうと言う事は考えていないので、とりあえずは領地だけいただいていきますね」

領地を奪われる事は、合戦においては完全な敗北を意味する。敗北後の決闘者は、領地を奪った決闘者の配下につくか、各地をさまよって拾われるか
…という2択となっている。

その際、賛成派が反対派に領地を奪われると反対派に変更しなくてはならないという暗黙のルールが存在する。しかし、島津はそれを無視して、宮崎代
表に今後も賛成派として活動できるように救済処置を取った。

「救済処置は、それぞれの都道府県に存在するハウスルール。他の都道府県も口出しできないようになっている以上、ここで口出しは無用…という事か」

ネイは島津が作った救済処置に口出しはしない事にした。

 

合戦二日目、賛成派の宮崎が連合軍によって陥落、それとは別に反対派の滋賀県と三重県が賛成派の愛媛県に陥落させられた。

「反対派とは言え…このレベルなの?」

誰かとおそろいと思われるスニーキングスーツ、元々が女性用ではない為か胸の部分だけは開いた状態になっている。そこに水着の上半身だけを…と
言った感じである。そんな格好の決闘者が地面に倒れている滋賀県と三重県の決闘者に話し掛ける。

「貴様…長崎代表のゼーバーの…関係者なのか?」

意識がないに等しい状態の三重県決闘者が彼女に問いかける。

「ゼーバー…。確かに、彼とは同じ部隊に所属していた事があったわ。私の目的も…彼と似たようなものだわ」

彼女、サラ=ユニオンは虫の息に近かった三重県決闘者の問いかけに答えた。

「道理で…強い訳だ…。あの特殊部隊の出身者は…」

サラは彼の最後の発言を否定しなかった。確かに自分は例の特殊部隊の出身だ。神聖東京投資家が出来る前の前身である。

「彼らを病院へ…。合戦は…終わったわ」

サラはスタッフに病院へ搬送するように指示した。

「こんな事がなければ、もう少し私の事を理解してくれたと思ったのに…」

サラの目には、涙が浮んでいた。

最終的には、関東の強豪や北海道、賛成派に寝返った広島や瀬戸飛天を有する栃木と群馬の連合軍には動きがなく、合戦も2戦だけで終了した。

 

「特に妨害とかはなかったようだな…」

月原は日本地図が映し出された合戦専用ディスプレイを眺めながら呟く。

「しかし、神奈川が全く動いていないのが気になりますね…」

秋葉は神奈川がやけに静か過ぎる事に疑問をもった。

「確かに。あの場所には、天下りや談合になどに関わった会社が多かった。それもあるのだろうか…」

そして、2日目が終わった。

 

1週間が経過した頃、遂に強豪に動きがあった。本部に東京代表からの合戦申請が来たのである。相手は静岡県で、相手の逆指名を受けた合戦でもある。

「逆指名で合戦か…。珍しいケースだな…」

月原が感心しているが、指名された秋葉の方は困惑気味である。

「反対派は、静岡、新潟、佐賀、山梨、熊本

辺りがなかなか粘っているが…それ以外は本命の決闘者ばかりだからな。賛成派としては厳しい合戦になる…」

秋葉も反対派の急進には戸惑いを隠せない。

そんな中、合戦に関するニュースをほぼ1日中フォローしている合戦二十四時で動きがあった。

「緊急ニュースをお送りします。反対派の青森が、午前10時に同じ反対派である新潟の決闘者、ヘラクレスとの合戦を行っている事が明らかになりました。繰
り返して―」

月原は耳を疑った。同じ反対派同士の合戦はルール上は認められているが、そんな事をやって反対派に得があるのか…と。

「反対派も一枚岩ではないって事だね。じゃあ、こっちは静岡に行かないと…」

そして、秋葉はすぐに姿を消した。俗に言うテレポートである。

「合戦は基本的に申請が必要になっているが、まさかこういう事になるとはね…」

彼の手元には、新潟代表と青森代表の合戦申請書が両方の県から来ていた。

「理由は…そういう事か。これは、青森が勝つな…」

新潟の理由を目に通した月原が冷静に判断した。青森の理由は、神奈川との連携に反したから…とある。

 

「まさか、この新潟が誇る巨人であるヘラクレスを相手にしようという決闘者がいるとは…。しかも、反対派が相手とは、傑作だな」

新潟代表の決闘者であるヘラクレスは、その昔に救助活動用に作られた10メートル近くの巨大ロボである。それに、今回の合戦に備えたカスタマイズがされて
いる。

「確かに、噂では聞いていたけど…。本当にロボを出してくる県があったとはねぇ…」

ヘラクレスを下から眺めているのは、青森代表の決闘者、ソーラー=バインドである。長い耳、背中には悪魔のような羽、目付きも普通の人間とはかなり違う。ま
るで、悪魔なのではないか…と。

「ルール上では、高さ50M辺りまでならば認められているからな。それを逆手に取ってヘラクレスを改修した…と言う訳だ。」

「そう言えば、ヘラクレスって米軍が開発に関わってなかったっけ?」

「確かにこれの前身であるアトラスには米軍の技術が使われていたが、こちらは純日本製だ。他国の技術の使用を禁止している部分には当たらない…」

「じゃあ、遠慮なくいくわよ!」

数分ほどの会話の後、合戦が始まった。体格の差では圧倒的にヘラクレスが優勢である。

しかし、機動力ではソーラーの方が上。

「ヘラクレスの装甲は、対魔力装甲に変更してある。更には…!」

強力な魔力の光を宿した拳がソーラーに襲いかかる。ソーラーは体制を崩していて避けられる気配はない。

「くらえっ、クリムゾンインパクト!」

強力な一撃がソーラーに命中。しかし、ソーラー本人は健在である。直前で左足のシールドを展開してダメージを緩和していた。

「バカな…神聖東京投資家の必殺技をベースにした、クリムゾンインパクトが…受け止められただと。しかも、片足で!」

間合いをとり、ヘラクレスは更にホーミングレーザーの連射でソーラーの接近を阻止しようとするが、ことごとく避けられてしまう。

「さぁて、そろそろ反撃と行こっか?」

両足のブースターを稼動させ、超高速でヘラクレスに突撃を仕掛ける。さすがのヘラクレスもこの攻撃には少し体制を崩した。そこからソーラーは間髪をいれずに
右足の拡散レーザー砲と左足の高速砲であるマジカルショットを交互に連射、ビームの残弾が少なくなったと同時に腰のベルトに取り付けてあるビームブレード発
生装置を両腕に取り付け、斬撃乱舞をおみまいする。

「だが、ヘラクレスの装甲は…そう簡単には貫けないぞ!」

「さぁ…それはどうでしょう?」

次の瞬間、ソーラーの全身が金色に輝きだした。俗に言うフルパワー状態だろう。

「スパイラルエッジ、受けてみなさい!」

ソーラーの超高速回転を加えた蹴りの連打…さすがの重装甲を誇るヘラクレスでも、この一撃を耐える手段はなかった。

「我らの誇り…ヘラクレスが…!」

彼は呆然としていた。油断があったとは言え…敗北したのである。他の予備候補は倒せたはずのヘラクレスが…。

「まぁまぁだったよね。でも、私に合戦を挑むなんて…ちょっと無謀だったかな?」

ソーラーの方はまだまだ余裕である。

「あの足…まさか、レイブステージの…!」

彼は思った。その昔、レイブステージは獣人を作り出そうとしたプロジェクトがあったのだが、他の計画が優先された為に計画そのものが中止になったという話を聞
いた事があった。ひょっとすると、ソーラーの脚部集中型のアーマーには何か裏が…と。

「レイブステージ…か。私は、既に縁を切ってるから…もう関係ないよ」

そう言い残し、ソーラーは会場を後にした。

「自分の信念が…貫けなかったとは…!」

新潟では近年になって防災の意識が高まったのをきっかけに、米軍で開発された2足歩行型兵器を災害救助等の分野で使えないだろうか、と密かにアメリカとコン
タクトを取って技術者を派遣してもらった経緯がある。そして、共同開発で完成したのがしたのがアトラスだった。動力は太陽電池だったが、その動力面を改良し、
魔力で動くように変更したのがアトラス改、アトラスとは別の独自技術を使って完成させたのが、ヘラクレスだった。

「まさか、反対派に倒されるとは…」

ヘラクレスの開発者もため息ばかりだった。

技術としては完璧だったはずなのに…決闘者との合戦では、満足な結果を出せなかった。

やっぱり、武装各種を追加しただけのバージョンでは駄目だったのか…と思ったが、おそらくは違うのだろう、と。

「やはり、軍事技術から転用して作り出したヘラクレスでは…合戦には生き残れないのだろうか?」

彼はヘラクレスから降り、大破したヘラクレスを見て改めて思った。合戦で本当に必要な物は…もっと違う物ではないか、と。

「今回得たデータを参考に、ヘラクレスの改良型を作り出そう。どうやら、合戦を利用したPRは失敗に終わったようだ」

実はヘラクレスに乗っていた彼こそ、新潟県の知事本人だった。知事自らが進めたヘラクレスの合戦でのPR作戦は失敗に終わった。

 

ヘラクレス敗退のニュースはすぐに放送された。青森の決闘者に敗退した事、新潟県知事が実は決闘者だったこと…色々な事がニュースで判明した。

「まさか、知事本人が決闘者だったとは…災害救助用ロボットの流用とは言え、レイブステージが昔に関与した決闘者に敗れるとは…もう少し、周辺を調べてみるか」

月原は、その後のニュースで秋葉が静岡代表決闘者を秒殺した事も同時に知った。月原は…さほど心配していなかったようだが。

 

「まさか、新潟県知事本人が決闘者だったとは…」

自分の家で合戦を見ていたジェノヴァ=飯島は、今回の結果に少し驚いていた。

「次は、我々が動く番だろう…知事殿?」

ジェノヴァはテレビ電話で千葉県知事とも今後の連絡を取っていた。

「そうだな。富山県を今の内に潰しておくのも手かもしれないだろう。石川県と同盟を結んだという話もある」

千葉県知事はジェノヴァと別の決闘者を決めていたのだが、彼女の実力を見て決闘者を変更した経緯を持っている。

「あの約束さえ破らなければ、私は別に構わないのだが…」

「チェス大会の事だろう。もちろん、我々が優勝できれば前向きに検討しておこう…」

ジェノヴァはチェスでは向かう所敵なしの実力を持ち、趣味でフットサルをやっていたりもした。ジェノヴァは日本のスポーツ関係で大幅に揺らぎが生じ、今回や以前の
ような萌えで経済を変えようとする者達を進出させる結果になってしまった。だからこそ日本には環境を整え、再びスポーツで諸外国と遅れを取らない国にしようと考え
ていた。千葉県知事もそんな彼女の考えに同調し、反対派となったのである。

「誰か客が来たようだ。申し訳ないが、続きは次の機会にしてくれ…。富山との決闘の件は頼むぞ…」

テレビ電話中にジェノヴァ付きのメイドが来たので何かと思えば、自宅に客が来たらしい…と言う事だった。

「誰かと思えば、広島代表か…」

玄関の前にいたのは、広島代表の厳島斎木だった。今回は1人だけで他にスタッフがいる気配はない。そして、厳島は場所を変えて話がしたい…と言って公園まで案
内した。

「お前も分かっているだろうが、未申請の合戦は私闘と同じだ。ペナルティーが来るが…分かっているのか?」

「申請なら、既に終わっているわ…一方的にだけど」

そして、二人の合戦が始まった。その場にいるのはジェノヴァ付きメイド数人のみ。ギャラリーもいる気配はない。

「後悔しても知らんぞ!」

チェスのポーンの形をしたガンビットを放つジェノヴァ、それに対し次々と炎でビットを撃墜していく厳島。ほぼ、実力としては互角だった。

「こちらも、実力を出さなくてはいけないようですね…」

厳島が速攻決着を付けるために、九尾の力を解放する。それに対し、ジェノヴァも必殺技の準備をする。

「悪いが、これで決着だ。キングオブシュート!」

ジェノヴァが放った強力なシュートが厳島にヒットしたが、命中後に発生した壁がダメージを軽減した。

「まさか…お前もなのか?」

厳島はジェノヴァの力に何らかの能力があるのでは…と思った。そして、数分の膠着状態の後、秋葉が突如として現れた。

「ジェノヴァ=飯島、厳島斎木両名、この合戦を今すぐ止めるんだ!」

「やっぱりな…。どうやら、申請も嘘だったようだな…」

ジェノヴァは予想通りの展開だ、と思った。しかし、秋葉の手には広島の合戦申請が間違いなくあった。

「広島に問い合わせた所、申請は提出済みだと言うから調べたら…本当に来ていたとは…正直言ってビックリした。だが、この合戦は受理できない」

「何故、その目的では受理できないのだ!」

「理由を簡単に言うならば、これは私闘だ…残念だが、私闘に関してはどのような理由があろうと受理をする事は不可能だ」

内容が読めてきた。その昔、千葉県知事は別の県で知事をやっていた事がある。その際の不正経理等が明らかになって失職したのだと言う事を。

「合戦は無効と言う事は…私の勝利も無効になる…という事か」

ジェノヴァは秋葉に尋ねた。お互いに致命傷は避けられていたが、ダメージとしては厳島の方が上だった。その為、ジェノヴァは勝利を確信していたのだが…。

「まぁ、数値チェックはさせてもらってはいたから…数値から見るとそうなるだろう。だが、そんな事を聞いてどうするつもりだったんだ?」

「ちょっと、気になる箇所があってな…」

ジェノヴァは厳島にあまりダメージが通っていないのでは…と思っていた。あの壁といい…九尾の力といい…。

そして、秋葉が今回の処分を二人に告げる前にある物を袋から取り出した。

「実際は、月原総裁が処分は決める事だが…今回に限ってはこちらで気が付いたから、自分が処分の方を決めさせてもらう。知事に関しては今回の合戦での処分は不
問にはするけど、君たちにはその分だけ多めに受けてもらうよ…」

袋から取り出したのは、いかにも露出度が高そうなコスチュームである。

「感謝するんだな。この案を出したのは、私ではなくて…瀬戸飛天なんだからな。」

このコスチュームには決定的な特徴があったのである。それは…。

「まさか、このコスチュームを着てカラオケで1曲歌えとか…」

厳島は気付いた。このコスチュームには、意図的に尻尾が出てくる部分には生地が全くない状態になっているのである。普通に着たらお尻が丸見えになるだろう。

「惜しい所を突いているけど、その回答では正解はあげられないな…」

「まさか、これを着て期間限定アイドルデビュー…か?」

秋葉は完璧な正解を出したジェノヴァに拍手を送った。

「ジェノヴァは勘が鋭すぎるな。その衣装を着て期間限定のアイドルとして、CDデビューしてもらうよ。多分、知事への根回しは月原総裁がやってくれていると思うけど。
当然だけど、これは合戦におけるペナルティーと同等の扱いだから拒否権は認めないよ。拒否した場合は…間違いなく合戦ペナルティーが両方の県に加算されるか
ら、そのつもりで」

容赦のない事をさらりという秋葉にジェノヴァと厳島の両名は要求を飲むしか方法はなかった。

「そう言えば、グループ名はどうするの?」

という厳島の質問に秋葉は…。

「すまん、そこまでは聞いていない。詳細は明日にでも指定された場所へ行けば分かるだろう。なお、その際の合戦への参戦は出来ないので…そのつもりで」

事実上の合戦への参戦一時停止とも言える発言だった。

 

その頃、茨城代表であるトパーズエンド=ナイトはジェノヴァが戦う予定だった富山県と石川県の連合軍と戦い、あっさりと連合軍を壊滅寸前まで追い詰めた。

「冗談だろ…レイブステージの切り札であるダークネスギアが実用レベルで完成していたなんて…」

石川県の決闘者が最後の抵抗でバズーカランチャーを連射するが、ダークネスギアには傷一つ付かない。それ所か、今までダメージを与えた場所も傷が修復されてい
る。

「無駄だ…おまえ達の武器では、傷一つすら付けられない」

両肩にある龍の首の形を模したランチャーから魔法の炎が放たれた。強力なドラゴンブレスである。その炎は、石川県の残り戦力を全て片付けた。

「おいおい…予備候補も投入して…この結果かよ…」

最後の1人も倒れ、富山及び石川の連合軍は壊滅した。

「話に…ならない…」

トパーズエンド=ナイトの表情は全く変わらなかった。まるで、操られているかのように…。

 

トパーズエンド=ナイトが猛威を振るっているその一方で、九州では島津を始めとした連合軍が長崎県を追い詰めていた。

「これで、九州はいただきですわね!」

しかし、長崎の最後の砦はゼーバー=ユニオンである。鬼島津といえど一筋縄では行かなかった。島津より前に挑んだ熊本代表は彼の前にあっさりと敗退した。佐賀県
代表のネイもゼーバーの前では互角の戦いを演じるものの戦略的撤退を取らざるを得なかった。

「そう簡単に長崎は渡さん!」

ゼーバーは肩のビームバルカンで牽制、右手に持ったビームキャノンの速射攻撃であるユニオンジャベリンの連携で攻めるが決定的な一撃になっていないのが現状だ。

「さすが、特殊部隊出身…この場は譲れない訳ね」

そして、島津は今まで見せる事のなかった鬼神形態の封印を解いた。

「これが鬼島津の、本当の力よ!」

各種アーマーを鬼島津に集中させ、大剣が更に大型化する。その大きさは数メートルという規模では片付けられない。

「あんな大剣をまともに受けたら…こちらも持たないな…」

そして、ゼーバーも最後の必殺技を使う事にした。これで何とか間合いを取りたい所だが…。

「くらえっ、スティンガージャベリン!」

音速のようなスピードで放たれたビームが島津に襲いかかる。島津もアーマーがない分だけ圧倒的に不利に思えたが、そのビームを紙一重で回避していく。しかし、ビーム
の方はかなりの誘導性能があり、全弾回避は出来なかった。

「あれで全弾直撃じゃないのか…」

ゼーバーは驚いた。しかし、全弾直撃ではないとは言え、致命傷を少し受けた。それでもなお、島津が引き下がる気配はない。

「これで、終わりよぉぉぉっ!」

大型斬艦刀となった鬼島津の気合を込めた一撃、鬼一閃(き・いっせん)がゼーバーに直撃する。

「我が鬼島津に…断てぬもの、なし!」

鬼島津がゼーバーのスティンガージャベリンを真っ二つにした。しかし、ゼーバーは健在だった。

「なんてパワーだ…。この俺さえも凌駕するとは…」

ゼーバーは素直に負けを認め、遂に九州は島津によって統一された。

 

その知らせは日本全土を震撼させ、反対派にとっては良い知らせとなり、賛成派にとっては悪い知らせとなった。その中で暗躍する者にとっても良い知らせとなった。