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4: 音楽新世紀元年
2008年12月、合格したメンバーに関しての発表がワックワック生放送内で行われた。
『想 定の範囲内だったか』
『あ の元プロ野球選手は駄目だったか』
『第 2次募集がどうなるか…楽しみだ』
コメントでも色々な意見が流れる。合格したメンバーは、飛翔、まどか、服部半蔵、サスケ、瀬川、ドラゴンの覆面、ライオンの覆面となり、 ピエロは補欠としてのメンバー入りなった。
2009年1月、草加市以外にも他の区域も範囲内となる予定だったが、草加市内限定で募集した多機能型太陽発電機のスポンサー募集に大量 の申し込みがあった事、申し込み分に対応する為の量産体制が難航した事により、第1次サウンドランナーのコースに関しては草加市内と東京 都足立区限定という事になった。
「ま さか、ここまで反響があるとは嬉しい悲鳴と言った所か…」
プロデューサーも計画スタート当時は、ここまでの大反響を呼ぶ事になろうとは思っていなかった。これも応援してくれたユーザーや他の協力 者のおかげ…という事か。
「今 回、運んでもらうメモリーはこれだ」
竹ノ塚駅前、赤いランナー用スーツを着たドラゴンの覆面がオペレーターの男性からメモリースティックを受け取る。これが本社ビルへ運んで 欲しいメモリーと言う事らしい。
「中 身に関しては、この通信も盗聴されている可能性が否定できない為、教える事は出来ない―健闘を祈る」
耳に付けたインカムからプロデューサーの声が聞こえる。彼の場合は、覆面の下に付けている為にインカムの形状などは確認できないが…。
「レッ ドドラゴン、走り抜ける!」
ドラゴンの覆面ことレッドドラゴンが竹ノ塚駅を出発し、本社ビルへと向かう。
『い よいよ始まるか…』
『あ のスーツは、生放送で発表された物のカスタマイズバージョンか』
『最 初に始まるのが、まさかドラゴンの覆面になろうとは予想外だな』
コメントでも他のメンバーが第1号の方が良かったという物もあったが、無事にスタートした事を喜ぶコメントが半数を占めた。
『考 えてみれば、メモリーと言う手段を使わなくてもプレミアム会員用の回線を使えば本社の方には送れるのでは?』
このコメントが放送中に流れると、その通りだが…というコメントが多く流れ始めていた。中には―。
『プ レミアム回線を使ったとしても、前の段階で発見されて音楽管理システム等に登録されたらアウトじゃないのか?』
プレミアム用と一般用では回線の仕様が若干異なるワックワック動画だが、回線に通す前の段階で楽曲が読み取られて登録されてしまったら同 じ事である。
『デ ジタルでセキュリティ不備が言われている状況だからこそ、サウンドランナーと言うアナログ手段で楽曲権利を保護しようと言うのが目的じゃ ないのか?』
強固なセキュリティでも完璧という保証はどこにもなく、デジタルサウンドにおけるセキュリティ不備は水色チューリップの一件から何度も言 われている事である。サウンドランナーと言う存在自体、楽曲の権利は早いもの勝ちではないと言う事を証明する為に作られたのではというの が有力説になっている。
『公 式ではこの辺りに関しては未発表だからな…憶測の域は出ないか』
実は、この辺りはワックワック動画でも公式発表はしておらず、時期を見て本来の目的を発表するとの事だが―。
レッドドラゴンが住宅街を走り抜け、本社ビルまで数百メートル近辺まで到達した。
『ま だ5分過ぎた辺りじゃないのか』
『ビ ルクライムは、コース的にも出てきそうにないか』
『やっ ぱり、飛翔がサウンドランナーの技術底上げをしているな』
コメントでも飛翔の存在が他の運び屋に影響を与えているような物が流れている。レッドドラゴンが6分台でゴールした事が実況されると―。
『あ の体格で良く走れるな…』
『6 分台が出たのか』
『あ の距離だったら、5分切ってもおかしくはないだろう―』
飛翔と比較するコメントも何個かはあったものの、半数近くは完走を祝福する物が多かった。それだけ、最初の中継が成功した事の意味合いは 大きい。
2009年2月、サウンドランナー人気がヒートアップしていく中、ある問題を抱えていた人物がいた。
「こ こ最近のサウンドランナー人気が影響して、同人大手のアーティストが次々とサウンドランナーに楽曲を届けるように依頼するケースが増えて きている―」
テレビ局の楽屋でノートパソコンとにらみ合いをしているのは、超有名アイドルとなった水色チューリップのリーダーであるノアだった。彼女 は、元々グループ50に所属していたが、解散後は水色チューリップの芸能事務所にスカウトされて新リーダーをする事になった。
「こ れでは、以前のようにサーバーをチェックして楽曲を登録と言う事が―」
ノアがクッションを壁に向かって投げつけようとしたが、途中でドアのノックする音が聞こえたので、投げるのをやめた。ノックして楽屋に 入ってきたのは水色チューリップのメンバー4人とマネージャーである。
「そ ろそろ打ち合わせと収録準備が出来たから、スタジオ入りして欲しいって…」
女性マネージャーがメンバーと共に打ち合わせに参加して欲しいとノアの楽屋にやってきたのである。ノートパソコンの中身は他のメンバーや マネージャーには気付かれていないようだ。
2009年3月、水色チューリップの新曲がメンバー変更後初のウィークリーチャート5位になったというニュースは芸能界に衝撃を走らせ た。ノアが加入してからはウィークリー初登場1位が続いていただけに、ベスト3ではなく5位になったという点も含めて衝撃が大きかった。 その代わりに、1位となったのは瀬川が過去に在籍していたラクシュミの新曲である。
『今 までよりはオリジナリティある曲だと思ったから1位を取れると思ったが―』
『やっ ぱり、例の騒動が影響しているのに加えてサウンドランナーの登場が止めをさしたのかも』
『記 録はいつか破られる物、それを永遠に続けられるとしたら…それは奇跡に近いのかもしれないな―』
ネット上でも水色チューリップのニュースは話題となり、記録はいつか破られる物、サウンドランナーの影響を一番受けたアイドル等とネット 上で言われるようになった。
『そ の一方で、遂に動き出した気配だな』
『強 化型装甲アイドル―以前の面接で瀬川が披露したアレの事か』
『政 府公認で特撮ヒーローなアイドルをやるとか…考え方が凄すぎる』
『強 化型装甲のデザイン募集―どうするつもりだ?』
水色チューリップとは別に話題となったのは、強化型装甲アイドルの存在だった。今まではトライアル等の情報ばかりで正式な情報が出てこな かったのだが、グループ名を含めて細かい部分まで発表されたのである。
『ホー リーフォース、サウンドランナーとは人気を二分化するのか不明だが、最低でも超有名アイドルよりは人気になりそうな気配が感じられる―』
ホーリーフォース、3月20日に一斉に情報が解禁となり、ネット上では水色チューリップの人気がダウンした事に続く大ニュースとなってい たのである。
『瀬 川がナンバー1か…サウンドランナーとどちらを優先して活動するつもりだろうか』
一方で、瀬川がホーリーフォースとサウンドランナーをかけ持ちしている事についてネット上では体調を心配する声があった。
2009年4月、第2次サウンドランナー募集がスタートした事に加えて、秋葉原や日暮里、東京都葛飾区及び北区の一部にもサウンドラン ナーのコースが新設された。第2次サウンドランナー改革の始まりを物語るような展開である。
「新 メンバーは既に2月頃に前回の不採用者を中心にして連絡して、再挑戦をしてみたいと言う5人と完全に新規メンバーとなる5人の合計10人 を加える予定になっています」
プロデューサーの話によると、第1次募集で不採用となった参加者の内、面接及び実技審査を水面下に受けて合格した5人と、今回の第2次審 査で新規に参加しようと言う5人の合計10人をメンバーに加えると言う物である。なお、この新規メンバー発表は5月に同時に行われる仕組 みになっており、前回同様に面接及び実技の模様は生放送もされる。
『前 回同様に生放送があるのか』
『前 回は時間が合わなかったが、今回は日曜になるのか…』
『敗 者復活枠で採用された5人が気になるが…新規で運び屋にエントリーした人たちも気になるな』
今回の面接及び実技に関しても中継がされる事には半数以上が賛成の意見である。その一方で、マンネリ防止策は欲しいとするユーザーやサウ ンドランナーの放送枠をもう少し増やしてほしいという意見も少数ながら存在した。
4月1日、補欠として登録されていたピエロの人物が遂にサウンドランナーデビューとなった。この放送には放送準備の段階から500人と言 う人数の視聴者数となり、この人物がどんなスキルを見せるのか…という期待の表れでもあった。
「届 けるメモリーは、こちらです」
女性オペレーターがピエロにメモリースティックを渡す。そして、ピエロの方は女性オペレーターに一礼をした後、指をパチンと鳴らして1枚 のメールを取りだした。
『ピ エロ凄いな』
『本 物のマジシャンかもしれないな』
『こ の人は喋らずにいて欲しい所だな。喋らない事が一種のアイデンティティになっている人物も存在する位―』
ピエロの演出に衝撃を覚える者、実は有名マジシャンなのでは…と思う者、喋らない事が一種の特徴である人物もいる為、彼には喋って欲しく ないと思う者等…ピエロを初見で見た視聴者にとっては驚きの連続であった。
「な るほど…このメールに書かれている文章を読み上げればいいのですね?」
女性オペレーターがメールの中身を確認すると、そこには他のサウンドランナーで言う所のスタート時の台詞が書かれていた。オペレーターの 確認を聞くと、ピエロはVサインで答える。
「ク ラウンクイーン、疾走します!」
クラウンクイーンと呼ばれたピエロは覆面と実技時に着ていた衣装を脱ぎ捨てた。その中から現れたのは、バニーガールを思わせるようなコス チュームと半分になったピエロの仮面と美女と思わせるような顔、黒髪ツインテール…。唯一の難点があるとすれば、体格がスリムとは言い難 い部分にあった。
『ま さかの正体吹いた』
『一 体誰だよWWW』
『外 見が誰得過ぎた。ピエロのまま走っても面白そうだが』
コメントの半数は期待外れ…と言う事ではなく、ネタ要員と言う事に対するコメントが多かった。本名不明でエントリー出来た事に対してのコ メントもいくつかあったが…。
『そ うなると、服部半蔵って何者なのか気になるな…確実に本名でエントリーしているはずだが、名前は何処にも出ていない』
クラウンクイーンが西新井からスタートする一方で、実技の最終テストを兼ねて南千住駅からスタートする人物がいた。
『あ の元プロ野球選手じゃないか』
『今 回の実技テスト、合格するといいな』
『体 力はあるから、後はマップを覚えられるかだが―』
南千住からゴールの草加まで走るのは、第1次の運び屋応募で落選をしてしまった元プロ野球選手である。コードネームは仮の物だが、ホワイ トイーグルを名乗っている。
「今 回の実技テスト…必ず合格をして第2の人生を掴む!」
しかし、北千住駅を通り過ぎようとした時に接近する一つの影が目撃された。
『こ ちらで未確認の妨害要素を発見した。実技テストは中止だ。ただちに戻りたまえ―』
ホワイトイーグルのインカムから男性の声でテストの中止を告げる連絡があったが、彼は連絡を無視して影を振り切ろうとする。
「振 り切れない…だと!」
いくら走っても影との差は広がるどころか狭くなっている。そして、振り向いた次の瞬間にはメモリースティックを奪われていたのである。
「メ モリーはいただいた―」
フルフェイスを被ったサウンドランナーが中継カメラに写っていたのだが、識別信号は出ておらず、おそらくは非公認サウンドランナーと思わ れる。それがどうしてメモリーの強奪を考えたのか…。
メモリースティック強奪の現場を別の人物も目撃していた。その人物は、忍者を思わるようなスーツに装甲というよりは甲冑に近いデザインを していた。認識コード等で、彼は服部半蔵だと言う事が分かった。半蔵は、ハンディカメラを片手にライダースーツの人物を追跡し始める。
「サ スケさん、どうして私の邪魔をするのですか? あなたも同じサウンドランナーならば彼女のやっている事は―」
その一方で魔法少女のコスチュームを着たまどかが北千住駅構内で、半蔵と同じ忍者コスチュームの人物であるサスケに足止めをされていた。 半蔵とサスケの違いは、忍び装束の色が半蔵は黒に対して、サスケは青と言う点だろうか。
「残 念だが、君の性格では彼女をその場で捕まえるつもりだろう。それでは、こちらの都合に悪い―」
まどかはサスケの声に若干の違和感を覚えた。あの時に現れたのは女性だったが、目の前にいるサスケは男性声なのである。
『お 互いにそこまでにしてもらおうか―』
2人のインカムから聞こえた声の主はプロデューサーだった。どうやら、今回の一連の動きに関して何かをつかんでいるらしい。
『今 回の一件に関しては半蔵に全て一任してある以上、他のメンバーが介入して相手に気付かれる状況だけは作りたくない。事を大きくしてしまっ ては―』
プロデューサーの意向もある為、サスケとまどかはお互いに退却をする事にした。
「い つかは偽者が出現すると思っていたが…早いタイミングで現れるとは予想外だったとしか思えない。強化型装甲アイドルにも人気を取られる事 を懸念した妨害活動なのだろうか―あるいは単独犯か…」
プロデューサーはネット上でも強化型装甲アイドルが検索ワード上位に入っている現状や水色チューリップをはじめとした超有名アイドルがテ ンプレ化している事も―アイドル戦国時代を予感させる現象になっているのではないかと思っている。しかし、楽曲をデジタル手段ではなくア ナログで輸送する運び屋は楽曲ライセンスの使用料収入等で経営をしている芸能事務所にとっては、ある意味で問題となっている。
実は、裏で楽曲サーバーからライセンス登録されてい ないネット上の有名曲等に超有名アイドルの名義で登録するという裏工作も横行しているという噂がある。その為、アナログ手段で楽曲を輸送 するサウンドランナーと言う存在は彼らにとっては邪魔な存在でしかないのである。
「こ れでは芸能事務所も、何処かの権利屋等と同じレベル―。このような現状になった原因は、超有名アイドルのテンプレで競争率が激しくなった 事か…」
超有名アイドルのファン争奪戦は今に始まった事ではないが、最近はファンが重火器や二足歩行ロボット等で武装化し、他のファンクラブを潰 そうとするような計画が何度も立てられている現状がある。これらの計画は事前に阻止はされているものの、一歩間違えれば音楽業界と芸能界 が消滅しかねない程にデリケートな問題になっているのは事実―。
「他 のメンバーに水面下で情報を告知するレベルにとどめて、本格的な部分は半蔵に全てを一任するか―」
プロデューサーは、音楽業界が万が一でも超有名アイドルが影響して衰退するような事があれば、立ち直すのに時間がかかる…と考えている。 それだけは阻止したい―と思っていた。
2009年4月30日、偽のサウンドランナーに関する事件が新聞等の報道されるようになった。原因は水色チューリップが連続首位をラク シュミに取られた事がきっかけとなった一連の週刊誌報道からである。それに加えて火に油を注ぐ状態を作ったのが…。
『ど うして、この動画サイトでサウンドランナーの動画がある?』
『ワッ クワック動画とライバル会社のはずだったのが、方針転換か?』
前日の4月29日付でワックワック動画とは別のライバル社動画サイトにアップされた動画の内容、それはとあるサウンドランナーがメモリー を別の人物によって奪われている一部始終を撮影した物だったのである。
『やっ ぱり、偽者サウンドランナーは都市伝説じゃなかったのか』
『偽 者自体は、プロデューサーも調査している段階と言っていたが…』
この動画を見た大半のユーザーが、今まで存在するかどうか怪しいと言われていた偽者サウンドランナーが本当にいたという事を知る事になっ た。それに加え、この動画はアップした当日から再生数が急下に上昇、遂には半日も経過しない段階で100万再生を達成した。偽者サウンド ランナーの動画は複数がアップされており、しかもアップした人物の名前が…。
『服 部半蔵って、確か忍者の格好をした運び屋だったよな…』
『ま さか、内部告発?』
『何 処かの機密情報じゃないのだから、そんな簡単に―』
アップした人物の名前を見て、誰もが驚きの色を隠せなかったのである。特にサウンドランナーを知っている人物で服部半蔵と言えば超が付く 程の有名人である。
一連のアップされた動画の中には、例の水色チューリップ事件を連想させる比較動画やラクシュミの楽曲に盗作疑惑が…という部類の動画が多 数あり、これらは遂に政府を動かす所にまで発展させたのである。
「遂 にここまで動かしたのか…彼は」
プロデューサーも半蔵が一連の超有名アイドルの行動に関して、政府の重い腰を動かす事に成功した事に対しては吉報だと言う事で喜んでいた のだが…。
「も う一方は、逆にサウンドランナーの存続に関してピンチに立たされたと言っても―」
政府から来た緊急の要望書にはサウンドランナー計画に関する方針転換や超有名アイドルに対して批判的な展開を即時中止するように…という 文章が書かれていたのである。
「こ の辺りで超有名アイドルが市場を独占しようとしている事に対して、釘を刺さなければいけないようだ―」
プロデューサーも今回の事件に関しては様子を見るつもりではあったのだが、これ以上の放置はサウンドランナーにも影響を及ぼしかねないと 判断した。要望書の一部内容でプロデューサーの信念を揺るがしかねない記述があったかどうか不明だが、彼が取った行動を見る限りでは…。
2009年5月1日、夜のワックワック生放送で緊急番組が放送される事になった。プロデューサー以外には服部半蔵も出演する事になってい る。
『何 を放送するつもりだろうか―』
『半 蔵も出ると言う事は、一連のサウンドランナーに関する報道に関しての重大発表かもしれないな』
『ど ちらにしても、良いニュースなのか悪いニュースなのかは内容を判断しないとどうしようもないのか』
放送前10分前ではあるが、色々な話がネット上では流れている。
「実 は、皆さんに重要な発表をする為に生放送への出演を決めました―」
最初に現れたのは半蔵の方だった。プロデューサーが現れるのを予想していた視聴者は驚いた。しかも、特徴的な忍者をイメージしたスーツを 着たままでの登場である。
「そ して、今回の生放送では重大な発表を行う為に―」
次の瞬間、半蔵が兜を脱ぎ、そこから現れた正体に誰もが驚いた。
『ど ういう事なの?』
『そ んな馬鹿な事が…あるはずがない』
『ま さか、彼が半蔵の正体だったとは―』
『ビ ジュアル系バンド・エノクの―』
『ど うして、彼が超有名アイドルに反旗を掲げるような事を―』
コメントでも彼の正体に触れている物があるのだが、半蔵の正体は既に解散をしているビジュアル系バンドであるエノク所属のルシファーだっ たのである。
「今 までの行動を隠すような事をしてしまったのは非常にすまなかった。しかし、今の音楽業界は利益だけが得られれば…という体質や楽曲使用料 が多く手に入らなければ芸能事務所が運営できない―そんな危機的状況になっているのが現状だ。それは、既に他の動画を見れば一目瞭然だろ う。そして、そんな状況になるように仕向けた政府も…今回の事件に関しては被害者のような報道がされているようだが、加害者と言っても過 言ではないだろう―超有名アイドル商法に反旗を翻すような理由は、その辺りになる」
ルシファーは送られてきたコメントに対して回答できる範囲の物に関しては、極力回答をするという企画になっている。
『エ ノク解散の真意は水色チューリップにも関係あるのか?』
『や はり、あの早い者勝ち登録システムの影響で解散したのですか』
次に受け取ったコメントはエノク解散の理由である。正式には事務所側の事情で解散したという事にはなっているのだが―。
「事 務所の意向で解散したのは事実だが、その理由の一つは、週刊誌報道でも聞き覚えのあると思われるが、水色チューリップの楽曲盗作疑惑の風 評被害―あれは最終的にエノクを解散に追い詰めた物と言っても過言ではないだろう」
一部報道で言われていた風評被害説は事実だった事もルシファーは認める発言をした。
『こ れからの音楽業界はどうなるのか?』
『超 有名アイドル商法が全く売れなくなった場合、音楽業界が取るべきアクションは?』
『音 楽ゲーム楽曲が超有名アイドルに変わって頂点に立つのか気になる』
放送もラストに入ってきた所で、コメントの数が2万をオーバーする勢いになった。最後の質問は今後の音楽業界がどうなっていくのか…とい う物が圧倒的に多かった。
「こ の質問は非常に難しい質問だ…」
さすがのルシファーでも質問に答えられない…と思われていたが―。
「時 間の関係で短くなってしまうが、それでも良ければ質問に答える事にしよう」
ルシファーが視聴者に同意を求めた。コメントの半数以上は短くても構わない、答えられるのであれば質問に答えて欲しいと言う物だった。
「今 の音楽業界は楽曲単位で売れるよりもアイドル単位で売っているようなイメージが多いと思われるが、実際の所は芸能事務所単位で売上競争を しているのが現状だろう。今の超有名アイドル同士の闇取引等で操作されたCDチャートが続くようであれば、音楽業界も芸能界も崩壊するの は間違いない―」
『CD チャートの闇取引…だと?』
『ま さか、チャートの順位も金を積んで買う時代になったのか』
『オー クションサイトでの大量転売も、闇取引の一環なのかもしれないな』
『芸 能事務所単位―と言う部分は、ここ最近のCDチャートを見ると、アイドルグループは違っても実際は所属事務所が同じという部分の事だろう か』
『芸 能事務所としても、税金を政府に支払わないといけない。支払う税金を超有名アイドルの複数枚CDの販売やイベント券等という餌で釣って、 お金を稼いでいるような雰囲気だからな―』
予想していたこととはいえ、ルシファーの発言には賛否両論が飛び出す。CDが売れればそれで良いというユーザーもいれば、本当にCDが売 れる事と音楽業界が良くなる事は直結しないと言う発言もあった。
「音 楽業界が取るべきリアクションは、超有名アイドル商法の根本的な見直しだろう。それこそ、CDがデイリーチャートで1位になった当日に 10万枚以上もオークションサイトに出品されている現状を見れば、誰でも不正があったのでは…と思うはず。他にも超有名アイドルのファン クラブが優遇されるような株主のような制度を廃止、超有名アイドルばかりが音楽番組に呼ばれて、結果的にはどの音楽番組も司会者とセット を変えただけのような超有名アイドルの独断場になるようなケースも―おっと、失礼。少し熱くなりすぎて本音が出てしまったようだ…。それ 以外にはレコード会社が芸能事務所の意向で違うレコード会社のアイドルを堂々と出して、移籍話が浮上か…とあおるようなパターンもある が、これに関しては特殊ケースだろう」
『最 近は音楽番組を見ても同じアーティストばかりで面白みがないと思ったら、事務所の根回しだったのか』
『こ れだったら、ユーザー生放送の同人音楽リクエスト放送が面白いのは当然だな』
『今 のファンクラブはフーリガンと言うよりも軍隊色が大きいからな…この辺りは変更して欲しい所だな』
『確 かに、デイリーチャートで15万枚売れたというニュースの後に10万枚以上もオークションサイトで見かけたら、誰だって疑うな』
『こ ういった商法は超有名アイドル以外でも海外アーティストが使いそうな方法だが…』
『こ の商法が広まったら、政府が税制優遇をしそうな気配もするな』
相変わらずの賛否両論コメントだが、音楽番組に関してはルシファーの本音も交じっていた事もあって、賛成するコメントが若干多いように見 えた。
「最 後に音楽ゲーム楽曲が超有名アイドルに変わって頂点に立つかだが…これは可能性的にはあり得ないのが有力だろう。この辺りに関してはメー カーとユーザーの間にある壁が非常に大きい事と意図的に―おっと、もう時間か。プロデューサーの重大発表だけでも伝えておかないと―」
ルシファーが何かを喋りだそうとした時には放送時間が残り5分を切っていた。
『時 間と言っても残り5分だが…』
『他 に何かあると言う事か』
『一 体、どんな発表を?』
質問の回答が途中になった事よりも、重大発表の方がユーザーには気になっていた。
「ル シファーとの対談生放送に関しては別枠でも取る予定なので、期待してお待ちください。今回は、偽サウンドランナーの奪ったメモリーに入っ た楽曲が、超有名アイドルの水色チューリップの楽曲として登録されていたという事実が分かりました―」
『やっ ぱり、早い者勝ち制度を悪用するグループがいたのか』
『あ のシステム自体、欠陥だったと言う事を証明したのか』
『超 有名アイドルから賄賂とか受け取っていそうだな』
プロデューサーからの重大発表を受けてコメントも一気に増えてきている。
「そ れとは別件ですが、5月1日にサウンドランナーの大規模イベントを開催する事になりました。そのメンバーは…」
プロデューサーが放送時間ギリギリで大規模イベントに関して告知、更には飛翔、まどか、瀬川のメインランナー3人も出演する事を同時に発 表して、緊急生放送は終了した。
当日の午後10時、ワックワック生放送でのルシファー発言に関して政府は緊急の声明を発表―。
「水 色チューリップの楽曲は正式な手続きを経て登録されたものであり、生放送内であったような方法は誤った事実である」
普通であれば特定のグループ名を出すような事を政府がしないにもかかわらず、今回に限っては水色チューリップのグループ名を出してルシ ファーの発言を否定する声明を発表している。
『ど う考えてもおかしい』
『政 府が賄賂を受け取っている事実を認めたのと同じだな』
『自 滅乙』
ネット上でも話題には上がったのだが、大半の意見は政府が自分で賄賂の存在を認めたという物だった。
2009年5月1日、緊急生放送で告知のあったサウンドランナーのイベントが午前9時から始まるとの事で多くの視聴者がパソコンや携帯電 話からサウンドランナーがいつ出てくるのかを期待して待っていた。ゴールデンウィークと言う事もあって1日に休みを取って視聴している ユーザーも多い。
『ま だスタート10分前なのに、来場者数1000とか…』
『ゴー ルデンウィークを挟んでいると言うのも来場者数が多い原因だろう』
『イ ベントと言う割にはフルメンバーではないが、メイン3強が出るだけでも期待』
メインイベントと言う事らしいが、スケジュール等の関係上で、メイン3強のみという事になったらしい…と昨日の生放送後の告知で補足はさ れていたが。
スタート地点の谷塚駅周辺には大勢の観客の姿があった。直接メイン3強を見る為と言うのもあるかもしれないが、それ以上に色々と注目度が 高い事になっているのだが…その舞台裏を知っているのは瀬川だけだったのである。
「い よいよですね」
コスチュームに着替えてスタート地点にやってきたまどかは、既に駅前でスタートを待つ瀬川に遭遇した。
「今 日の内容次第では、サウンドランナーに新たな展開が生まれるかもしれない。失敗すれば解散もありえるかも―」
瀬川のサウンドランナー用スーツは、強化型装甲アイドルで使用する物と全く同じ仕様になっており、右腕にサウンドランナー用のGPS各 種、背中のバックパックがサウンドランナーのバッテリーパック仕様に変更されている点以外は共用となっている。
「結 局、サウンドランナー用のスーツを着る事は―」
スーツの寸法合わせで試着した以外で瀬川がサウンドランナー仕様のスーツを着た事は一度もなかった。それだけに、まどかは機械があればサ ウンドランナーのスーツも来て欲しいと思っていた。
「私 の場合はホーリーフォースも本格的に動く事になれば、向こうにも出なくてはいけないから、それを考慮してのデザインを技術部に言って―」
瀬川が話している途中で飛翔も駅前に姿を現した。飛翔のスーツはスパッツにタンクトップ、見覚えのあるようなインカムの形―両腕にGPS とバッテリー、プロテクターを両足に装備している以外はメモリーランナーのサイハと同じ装備なのである。
「そ んな軽装で大丈夫なのか?」
「大 丈夫よ、テストは万全だから問題はないわ」
まどかよりも軽装と言う事もあって瀬川は飛翔が怪我をしないか不安になっていた。しかし、本人は何度もテストを重ねた自信作と言う事も あって問題はないと答える。
「ま さか、ゲームと全く同じ世界観―とまではいかないけど、こういう展開になるとは誰も予想していなかったのかもしれないわね」
飛翔は思う。ゲーム中だとスーツの安全装置が動かなくなった場合に転落するとゲームオーバーになるのだが、リアルではコンティニューと言 う物は存在しない。安全装置が動かない状態で転落する事は大事故にもつながる。
「自 分でも正直驚いている。ホーリーフォースは特撮ヒーローショーのCMを見て思いついた物で実際にゲーム等が原作と言う訳ではない。しか し、メモリーランナーというゲーム原作を持ったサウンドランナーが、こうやって活躍をするという事は、いつか2次元と3次元の境界線がな くなる―と言う事を意味しているのかもしれない」
瀬川はメモリーランナーがベースとなって計画がスタートしたサウンドランナーを、現在自分が関係しているホーリーフォースと重ねていた。 そして、いつかは2次元と3次元の壁さえもなくなるのでは…と思っていた。
「で も、2次元と3次元の壁がなくなるのには抵抗感があります。確かに、最近ではそう言った動きがあると言うニュースもあちこちで見ますが、 2次元は2次元、3次元は3次元でルールも異なると言う事を周知させる事が一番なのでは…と」
まどかは3次元には3次元のルールが存在し、2次元のルールが100%通用するとは
限 らない。中には、2次元の方では問題がなくても3次元では犯罪となってしまう事もあるかもしれない。まどかは3次元には3次元のルールが あり、それは守られるべきなのでは…と思っていた。
「確 かにルールはルールとして尊重はされるべきだとは思う。サウンドランナーの安全装置部分の改造やブーツとグローブの出力を上げる行為も原 則禁止にしているのは、制御できなくなったパワーを―」
飛翔はサウンドランナーで安全装置部分やグローブとブーツの出力を上げる行為に関して全面禁止にしている事を2人に説明しようとしたが、 その途中で背格好も同じようなフルフェイスのサウンドランナーが6人出現した。イベントの開始には、まだ少し時間があると言うのに…。
「妨 害工作…か」
瀬川はホーリーフォース事務所から武器を転送しようと考えていたが、あくまでもサウンドランナーである為、サウンドランナーのルールに従 う事にした。そして、瀬川は持ってきたトランクケースを開け、入っていたメモリースティックを飛翔とまどかに投げて渡した。
「そ のメモリースティックを本社ビルに届ければ、こちらの勝ち。ランナーが持っているメモリースティックを全て奪い取れれば、あなた達の勝 ち…と言う事でいい?」
瀬川がルールの説明をし、フルフェイスの偽サウンドランナーを何とか駅から遠ざけようと考える。
「い いだろう。その話、乗った!」
赤いフルフェイスの一人が既に駅からは姿を消したまどかを3人で追う。もう一方の青いフルフェイスの人物も飛翔を追跡する。
「残 りの1人は…こちらか」
ピンクのフルフェイスをした人物は瀬川のトランクケースを狙っていた。どうやら、あの中に隠しメモリースティックがあると思っているよう だ。
「こ の作戦が上手くいくかは…瀬川次第か」
誰にも気付かれないような位置で3人の動きを見ていたのは半蔵だった。トランクケースを瀬川に渡したのは彼なのだが、その真意は瀬川以外 には全く知らせていない。
「サ ウンドランナーのルールから逸脱した行為を行った連中には―」
何かを確認した半蔵は、すぐに別のエリアへと向かった。
まどかを追跡するメンバーは3人、赤と緑と黄色のフルフェイスと言う構成である。
「ま るで、どこかの戦隊ヒーローみたいな構成みたいだけど…」
スーツのデザインはノーマルを改造した物であるのは間違いないが、フルフェイスに関してはどんな機能を持っているかは不明である。技術部 で該当の動画はアップされていなかった為、彼女達の協力者辺りが作らせたものだろう…とまどかは思った。
「し かし、連携が全くなっていない!」
数キロ程走った所で、黄色のフルフェイスが動きを止め、赤と緑もメモリーを奪いに何度もまどかに仕掛けるが、それを難なく回避し続ける。 彼女達の動きを見て、まどかはサウンドランナーに対しては全くの素人であると判断した。
「あ れは、もしかして…」
まどかがビルの屋上から眺めて発見したのは、別のエリアへと向かっているレッドドラゴンだった。
「ま どかか…一体、何をしている?」
レッドドラゴンもまどかの存在に気付いたらしく、ビルの屋上へと向かう。その屋上へと登る手段は、何と―。
「ま さかの壁登りと言うか…彼の場合は龍の滝登りかも―」
レッドドラゴンは、両脚のフィールド発生装置らしきものを利用し、高速での壁登りを実行したのである。7階建てのビルの屋上へ到着するま で、フィールド発生を含めてわずか5秒である。
「彼 女達の顔に、見覚えはないかな?」
疲れ果てて倒れている3人のフルフェイスの人物からフルフェイスを外すと、何処かで見覚えのあるような顔が現れたのである。まどかは見覚 えが全くない為に名前が出てこないようだが、レッドドラゴンは―。
「ど うして、水色チューリップのメンバーがサウンドランナーを…?」
彼は超有名アイドル商法に反対する組織に所属している為、すぐに誰が誰だか判別が出来た。しかし、水色チューリップのメンバーをサウンド ランナーにして何の得があるのだろうか…しばらくして、彼は何かを思い出した。
「ま さか、例の事件の犯人は―」
レッドドラゴンは緊急で本社に連絡を取ろうとしたが、何者かが出している妨害電波で連絡が取れなくなっていた。
「仕 方がない、自分が本社に行って事件に関して報告してきます。あなたは、他のメンバーと合流をしてください」
そう言い残して、レッドドラゴンは本社ビルへと全速力で向かった。
「電 波妨害があると言う事は、発電機も動かない…のかな?」
まどかはビルの屋上に置いてあった多機能型太陽発電機を調べてみた。太陽発電に関しては動いているようだが、表示に関しては使用不能と出 ている。表示が使用不能の場合はビルの機能維持を優先している関係上、メモリーランナー用のバッテリー充電は出来なくなっている状態の事 である。
「こ れは、合流するのに時間がかかるかな」
まどかのバッテリー残量は残り僅かになっており、他の多機能型太陽発電機を探すのにも自然充電を何度も利用して探さなくてはいけない為に 時間は確実にかかる。つまり、相手もメンバーを分散させてバッテリー消費を狙っていたと言う事である。
瀬川の方は、既に相手が倒れていた。
「2 キロコースを5往復はサウンドランナーの基本コースでもあるけど、まさかここまで脆いとは…」
瀬川本人もビックリするほどのフルフェイス部隊の脆さに、若干あきれ返っている。半蔵が密かに取っていた動画を見る限りでは脆い印象はな かったと言うのに…。
「も しかして、飛翔の方に―」
飛翔の援護に向かおうとしたが、予備のバッテリーも使い果たした状態で充電するのには時間がかかるだろう。相手側の作戦に乗せられた格好 である。
「そ う言えば、正体の方を確認していなかったけど…」
ピンクのフルフェイスを外すと、そこから現れた顔には瀬川は見覚えがあった。
「し まった! 本物は…」
水色チューリップのメンバーをフルフェイスに仕立て上げるとは…ここまで芸能事務所側が見境なしになっている証拠だろうか。
飛翔を狙っているフルフェイスは青と黒の2名である。しかし、青と黒はまどかと瀬川の足止めとして現れたフルフェイスとはスキルの桁が 違っていた。
「あ の時の影の正体が…黒のフルフェイスという事ね。向こうはビームサーベルを持っているけど―こちらは武器と言える物は全く持っていない。 捕まらない範囲で逃げるか―」
強化型装甲アイドルとは違い、サウンドランナーは武器と言う物を全く携帯していないのが特徴になっている。ビルクライミング用のワイ ヤー、クレーンアーム、アンカーユニット等の武器になりそうな補助アイテムは存在するが、どれも使用許可が下りていない為に現在は使用で きない。
「あ のスピード、もしかして…違法改造?」
飛翔のテクニックで何とか距離を置いている状態にはなっているが、現在の速度は飛翔よりも相手の方が上である。そこで考えたのは、ルール 上は禁止されているブーツの違法改造による速度上昇である。
「あ の違法改造をやったら、足の負担が大きくなって最悪の場合は―」
フルフェイスの2人にスーツを使うのを止めるように警告をしようとしても、言う事を聞くような状態ではない。そこで飛翔はバッテリーを意 図的に消耗させる戦法に出ようとしたのだが、バックパックの形状を見て様子がおかしい事に気付いた。それは―。
「バッ クパックその物に太陽発電を装備したタイプ? 技術部でも実用レベルには到達していない物を、どうやって―」
何と、2人の使用しているバックパックには自動的に太陽光を吸収してバッテリーを回復させる自動回復機能が搭載されていたのである。しか も、この技術は技術部メンバーでも開発はしているが実用段階に耐えられるサイズにする技術が不足している。
「お そらく、向こうは強化型装甲アイドルの技術とサウンドランナーの技術を融合させた複合タイプのアーマーを使っている。それならばブーツの 速度上昇という違法改造をやったとしても、強化型装甲アイドルの技術を使って不足分を補えば足の負荷を最小限にできる…と言う事か」
飛翔は、自分が相手にしているフルフェイスがどれだけの技術を使っているかの把握が大体出来ていた。強化型装甲アイドルとサウンドラン ナーの技術を融合させた最先端アーマー…飛翔が相手にしているのは、オーバーテクノロジーの塊だったのである。
「瀬 川のアーマーと同じという事は…本社ビルに到達してメモリーを渡した方が、サウンドランナーのルールとしては―!」
いつの間にか距離を詰められていた飛翔は青いフルフェイスの持っているビームサーベルを何とかかわすものの、もう一方の黒いフルフェイス にメモリースティックを奪われてしまった。
「う かつだった…」
飛翔の絶体絶命の危機。このままでは他のメモリーも奪われる…と思われた。
『ま さか!』
突如として現れた忍者に、黒いフルフェイスの人物は奪い取ったメモリーを奪い返されてしまった。
「ど うやら、こちらの計画は成功したようだな…」
その忍者は、何と服部半蔵だった。
「計 画って…」
飛翔は何の事だか…という顔である。一方のフルフェイスの方も半蔵が現れた地点で作戦が失敗する…とターゲットの変更を他のメンバーに指 示しようとしたが…。
『通 信が出来ない…?』
先ほどまでは通信が出来たのだが、今は青意外と連絡を取る事が出来ない。他のメンバーが既に倒されているという証拠である。
『な らば、半蔵だけでも!』
青のフルフェイスが半蔵に襲い掛かる。最初のビームサーベルは回避したが、次の攻撃は何と思わぬ所に命中してしまう―。
「し まった―!」
次の瞬間、半蔵の動きが止まってしまったのである。ビームサーベルが命中したのはバッテリーとGPSをつなぐケーブルで、このケーブルは グローブやブーツに電気を送る役割も持つ重要な部分である。
『こ れで、形勢逆転―。彼の命を助けて欲しければ、お前達の持っているメモリースティック、それを全て渡してもらおうか?』
半蔵に向けてビームサーベルを向ける黒のフルフェイス。文字通りの形勢逆転の瞬間だった。そして、飛翔は他にも策を考えたが今のタイミン グで実行をしたら危険であると判断し、メモリースティックを黒のフルフェイスに向かって投げた。
『確 かに受け取った。だが、それだけでは納得できない。手始めに、この場で―』
メモリーを受け取った一瞬の隙を見逃さなかったサスケがベストタイミングで現れ、黒と青のフルフェイスを一撃でKOさせた。
「色々 と巻きが入っているからな。悪く思うならば締め切りを恨め―」
サスケの一言が何を言っているのかさっぱり分からなかった半蔵と飛翔だったが、一連の偽者サウンドランナーに関しては一応の解決となっ た。
「さっ きのアレ、何なの?」
飛翔もサスケの台詞が若干気になって追求したのだが―。
「そ のままの意味だけど…」
サスケは飛翔に対して言うのだが、答えにはなっていないような気がする。
その頃、瀬川は草加駅で青空を見ていた。
「全 ては、これから始まる―」
彼女の言葉も、そのままの意味だった。